林 芙美子 作 平凡な女読み手:海老 実穂(2020年) |
奥様同士が子供を連れての立話に、
「まア! お久しうございます。皆様おかわりもなくていらっしゃいますか、一番お末の方、もう、こんなにおなりでございますの?」
「ええもう八ツになりまして、一年生でございますのよ」
「あらまア、そうですか、ほんとに早いもので、宅のがもうあなた尋常四年生でございますものね」
以前の私が、道の行きずりにこんな話を聞いたならば、子供が八ツになって小学校へ行くのはあたりまえの事で、女同士の話題の狭さにぷりぷり腹をたてていたかも知れない。だが、このごろは途上でそんな立話を小耳にしても腹が立つどころか、日向でぬくぬくとしているような心温かなものを感じるし、女らしくていいものだと考えるようになって来た・・・