小川 未明 作 海と少年読み手:谷岡 理香(2020年) |
清さんとたけ子さんの二人は、お母さんにつれられて、海岸へまいりました。
「清さんは、男ですから、泳ぎを知らなくてはいけません。ここには、泳ぎの上手な先生がいらっしゃるから、よく習って、覚えなさいね。」と、お母さんは、おっしゃいました。
その晩、清さんは、お母さんや、妹のたけ子さんと、海の見えるお座敷で、メロンやお菓子を食べながら、宿の人から、いろいろのおもしろいお話をききました。中でも、いちばん心をひかれたのは、もう、七、八年も前になるが、五、六人連れの旅芸人が、ある日、急いでここの港から、船に乗って出立したときのことであります。乗り後れた一人の少年がありました。船は、少年を残して、そのままいってしまったのです・・・