小川 未明 作 珍しい酒もり読み手:菅野 秀之(2019年) |
北の国の王さまは、なにか目をたのしませ、心を喜ばせるような、おもしろいことはないものかと思っていられました。毎日、毎日、同じような、単調な景色を見ることに怠屈されたのであります。
このとき、南の国へ使いにいった、家来が帰ってまいりました。なにかおもしろい話を持ってこないかと、さっそく、その家来にご面会になりました。
「ご苦労だった。無事にいってこられて、なにより、けっこうのことだ。南の国王は、達者でいらせられたか……。」と、おたずねになりました。
家来は、長い旅をしたので、顔の色は、日に焼けて、頭髪は、雨や、風に、たびたび遇うたことを思わせるように、伸びて乱れていました・・・