上村 松園 作 幼き頃の想い出読み手:田部 真理(2018年) |
古ぼけた美
東京と違って、京都は展覧会を観る機会も数も少のうございますが、私は書画や骨董の売立のようなものでも、出来るだけ見逃さないようにして、そうした不足を満たすように心掛けて居ます。そうして、そのような売立なぞを観に参りまして、特に興味を惹かれますのは、評判の呼び物は勿論でございますが、それよりも片隅に放擲されて、参観者の注視から逸して淋しく蹲って居る故も解らぬ品物でございます。そこに私はゆくりなく慎ましい美を発見するのでございます。たとえばその昔女郎の足に絡わって居た下駄だとか、或いは高家の隠居が愛用して居た莨入だとか、そういったトリヴィアルなものに、特殊な床しい美が発見されるのです・・・