小川 未明 作 赤い手袋読み手:岡田 百合子(2018年) |
政雄は、姉さんからこさえてもらいました、赤い毛糸の手袋を、学校から帰りに、どこでか落としてしまったのです。
その日は、寒い日で、雪が積もっていました。そして、終日、空は曇って日の光すらささない日でありましたが、みんなは元気で、学校から帰りに、雪投げをしたり、また、あるものは相撲などを取ったりしたので、政雄も、いっしょに雪を投げて遊びました。そのとき、手袋をとって、外套の隠しの中に入れたような気がしましたが、きっとよく入れきらなかったので、途中で落としてしまったものとみえます。
政雄は、家に帰ってから、はじめてそのことに気づきました。いよいよなくしてしまいますと、なつかしい赤い手袋が目についてなりませんでした・・・