村山 籌子 作 あひるさん と つるさん読み手:田中 淑恵(2018年) |
あひるさんは鳥は鳥でも羽が短いのでとぶことが出来ません。あひるさんの近所に、鶴さんがゐました。二人はお友達でした。
あひるさんは鶴さんの羽を見る度に一度貸してもらひたくて仕方がありません。でも、貸して下さいなどといふことは、あひるさんは恥しくて言へません。「鶴さん、君の羽は飛べるからいゝねえ。僕、君に、僕の持つてゐる万年筆をあげようか」とあひるさんが言ひました。鶴さんは大喜びで、「うれしいなあ、ほんとに呉れるのかい。」と言ひました。「うん、今あげる。」と言つて、あひるさんは鶴さんに万年筆をあげてしまひました。そして鶴さんは毎日、それを胸にはさんでゐます。でも「ぢやあ、君に、僕の羽を貸してあげよう。」とは言ひません・・・