宮沢 賢治 作 畑のへり読み手:野村 明子(2018年) |
麻が刈られましたので、畑のへりに一列に植ゑられてゐたたうもろこしは、大へん立派に目立ってきました。
小さな虻だのべっ甲いろのすきとほった羽虫だのみんなかはるがはる来て挨拶して行くのでした。
たうもろこしには、もう頂上にひらひらした穂が立ち、大きな縮れた葉のつけねには尖った青いさやができてゐました。
そして風にざわざわ鳴りました。
一疋の蛙が刈った畑の向ふまで跳んで来て、いきなり、このたうもろこしの列を見て、びっくりして云ひました。
「おや、へんな動物が立ってゐるぞ。からだは瘠せてひょろひょろだが、ちゃんと列を組んでゐる。ことによるとこれはカマジン国の兵隊だぞ。どれ、よく見てやらう。」・・・