小川 未明 作 てかてか頭の話読み手:池戸 美香(2018年) |
ある田舎に、おじいさんの理髪店がありました。おじいさんは、もうだいぶ年をとっていまして、脊が曲がっていました。いいおじいさんなものですから、みんなに、おじいさん、おじいさんと慕われていました。
ちょうど、夏の昼過ぎのことであります。お客が一人もなかったので、おじいさんは、居眠りをしていました。
家の外には、きらきらとして暑そうに日の光がさしていました。往来の土は乾ききって、石の頭までが白くなっていました。あまりあついとみえて、犬一ぴき通っていませんでした。よく遊びにくる近所の子供らも、みんな昼寝をしているとみえて姿を見せません。ただせみが、あちらの森の方で鳴いているのが聞こえてきたばかりでした。
白髪頭のおじいさんは、いい気持ちで、こっくり、こっくりと腰かけて居眠りをしながら夢を見ていました・・・