小川 未明 作 青葉の下読み手:金勝 陽子(2018年) |
峠の上に、大きな桜の木がありました。春になると花がさいて、とおくから見るとかすみのかかったようです。その下に、小さなかけ茶屋があって、人のいいおばあさんが、ひとり店先にすわって、わらじや、お菓子や、みかんなどを売っていました。
荷を負って、峠を越す村人は、よくここのこしかけに休んで、お茶をのんだりたばこをすったりしていました。
賢吉と、とし子と、正二は、いきをせいて、学校からかえりに坂を登ってくると
「おばあさん、水を一ぱいおくれ。」といって、飛びこむのでした。
「おお、あつかったろう。さあ、いまくんできたばかりだから、たんとのむがいい。」と、おばあさんは、コップを出してくれました。おばあさんは、峠の下から、二つのおけに清水をくんで、天びんぼうでかついで上げたところでした・・・