ハワード・フィリップス・ラヴクラフト 作、大久保 ゆう 訳 ニャルラトホテプ読み手:由良 瓏砂(2017年) |
ニャルラトホテプ……這い寄る混沌……残ったのはもうわたしだけ……この何もない空を聞き手にして、お話ししようと思います。
そもそものことは、はっきりとは思い出せません。でも何ヶ月か前です。みんなひどくぴりぴりしていました。世の中がひっくり返ろうとしているところへきて、なぜだか強く身に危険を感じて不安になる――あたりが、どこもかもが危なかったのです。夜をただわけもなく怖がる、そんな極端なときにしか感じないたぐいの〈危険〉です。思い出せば、道を歩くみなさん真っ青な浮かない顔で、何かの前触れだとか、これから先のこととかささやくのですが、どなたもわざわざ繰り返したり、聞いたことにうなずいたりはなさいませんでした・・・
・この作品は青空文庫に提供されています。
◇翻訳者:大久保 ゆう
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