寺田 寅彦 作 さるかに合戦と桃太郎読み手:宮澤 賢吉(2017年) |
近ごろある地方の小学校の先生たちが児童赤化の目的で日本固有のおとぎ話にいろいろ珍しいオリジナルな解釈を付加して教授したということが新聞紙上で報ぜられた。詳細な事実は確かでないが、なんでもさるかに合戦の話に出て来るさるが資本家でかにが労働者だということになっており、かにの労働によって栽培した柿の実をさる公が横領し搾取することになるそうである。なるほどそう言えば、そうも言われるかもしれない。しかしまた、一方で、多年手塩にかけた子供らを安心して学校に託している「赤くない親たち」の心持ちから言えば、せっかく苦労して育てただいじのだいじの子供らを赤い先生のためにだいなしにされたと思うかもしれない・・・