岡本 かの子 作 男心とはかうしたもの
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尊敬したい気持
結婚前は、男子に対する観察などいつても、甚だ漠然としたもので、寧ろこの時代には、男とも、女とも意識しなかつた位です。
それが結婚して、やうやく男子に対する自覚が出来、初めて男といふものが解つた時、私の感じたのは、男子といふものは事業慾が強くて、一般に利己主義なものだと思ひました。
然しかうした考へは、まだ充分に男子といふものが解つてゐない。つまり観察の一階段に過ぎなかつたもので、それから立ち直つて考へて、だん/\男といふものが解つた気もちになつた時、尊敬の念が起るやうになりました。つまり一段階に於いて感じた男子の利己主義も、それをつぐなつて余りあるだけの男の偉さを、第二段に於いて感ずるやうになつたのです・・・