小川 未明 作 ある男と無花果読み手:緒方 朋恵(2017年) |
ある男が、縁日にいって、植木をひやかしているうちに、とうとうなにか買わなければならなくなりました。そして、無花果の鉢植えを買いました。
「いつになったら、実がなるだろう。」
「来年はなります。」と、植木屋は答えました。しかしその木は、小さくありました。
男は、それを持って帰る途中夕立にあいました。
もう、そのときは、そんな木どころではありません。木などは、どうでもよかったのです。友だちの家に頼って、雨のやむまで待って、帰りには、その無花果の鉢を預けてゆきました・・・