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楠山 正雄

夢占

読み手:入江 安希子(2024年)

夢占

著者:楠山 正雄 読み手:入江 安希子 時間:4分47秒

   一

 むかし、摂津国の刀我野という所に、一匹の牡鹿が住んでいました。この牡鹿には二匹仲のいい牝鹿があって、一匹の牝鹿は摂津国の夢野に住んでいました。もう一匹の牝鹿は、海を一つへだてた淡路国の野島に住んでいました。牡鹿はこの二匹の牝鹿の間を始終行ったり来たりしていました。
 けれども牡鹿は摂津の牝鹿よりも、淡路の牝鹿の方を、よけい好いていました。そしていつも淡路の方へ行って遊んでいることが多いので、夢野の牝鹿はさびしがって、淡路の牝鹿をうらんでいました・・・

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