小川 未明 作 花と人間の話読み手:坂井 あきこ(2024年) |
あるところに、おじいさんと、おばあさんとが住んでいました。その家は貧しく、子供がなかったから、さびしい生活を送っていました。
二人は、駄菓子や、荒物などを、その小さな店さきに並べて、それによって、その日、その日を暮らしていたのです。
あるとき、おじいさんは、どこからか、小さな常夏の芽をもらってきました。それを鉢に植えて水をやり、また、毎日、日あたりに出して生長するのを楽しみに丹精をいたしました。
木によらず、草によらず、また人によらず、すべて小さなときから、大きくなるには、容易のことでありません。いろいろの悩みや、苦痛や、骨おりがそれに伴うものです。
おじいさんは、常夏を大きな雨に当てないようにしました・・・