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宮沢 賢治

春と修羅 丘の眩惑

読み手:入江 安希子(2024年)

春と修羅 丘の眩惑

著者:宮沢 賢治 読み手:入江 安希子 時間:1分14秒

 丘の眩惑

ひとかけづつきれいにひかりながら
そらから雪はしづんでくる
電しんばしらの影の藍や
ぎらぎらの丘の照りかへし

  あすこの農夫の合羽のはじが
  どこかの風に鋭く截りとられて来たことは
  一千八百十年代の
  佐野喜の木版に相当する

野はらのはてはシベリヤの天末
土耳古玉製玲瓏のつぎ目も光り
    (お日さまは
     そらの遠くで白い火を
     どしどしお焚きなさいます)

笹の雪が
燃え落ちる 燃え落ちる

(一九二二、一、一二)

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