小川 未明 作 人の身の上読み手:眞家 貴子(2024年) |
お花は、その時分叔父さんの家に雇われていました。まだ十七、八の女中でありました。小学校へいっていたたつ子は、毎日のように叔父さんのお家へ遊びにいっていました。叔父さんも、叔母さんも、たつ子をかわいがってくださいましたから、ほとんど、自分の家も、かわりがなかったのであります。
叔父さんの家には、お花のほかに、もう一人お繁という女中がおりました。年はかえって一つか二つ、お花よりは少なかったかもしれませんが、よく働いて、よく気がついて、気の短い叔父さんの気にいりでありましたけれど、どういうものかお花は、よくいいつかったことを忘れたり、また、晩になると、じきに居眠りをしましたので、よく叔父さんから、小言をいわれていました・・・