小川 未明 作 すみれとうぐいすの話読み手:加藤 供子(2024年) |
小さなすみれは、山の蔭につつましやかに咲いていました。そして、いい香りを放っていました。
すみれは、そこでも、安心をしていることは、できなかったのです。なぜなら、そのすみれをたずねてくるものは、ひとり、美しいちょうや、かわいらしいみつばちばかりではなかったからです。
「ここにも、すみれが咲いていた。とって香りをかいでごらんなさい。いい香りがするから。」と、山に遊びにきた、子供たちはいったのです。
すみれは、自分ほど、不幸なものは、この世の中に、ないと思いました。小さな体で、しかも、ものの蔭に、つつましく咲いているのを、それすら安心ができなかったからです・・・