閉じる

閉じる

上村 松園

女の話・花の話

読み手:中村 昭代(2024年)

女の話・花の話

著者:上村 松園 読み手:中村 昭代 時間:10分19秒

   ○

 責任のある画債を少しずつ果していっておりますが、なかなか埓があきません。それに五月一日からの京都市主催の綜合展の出品画――長いこと帝展をやすんでおりますから、その埋め合せと申すのでもありませんが、今度は何か描いてみようと思い立ちまして、二尺八寸幅の横物に、明治十二、三年から四、五年どこの、女風俗を画いております。
 あの頃のことは、私も幼な心に薄々と覚えておりまして、思い出してみても物なつかしいような気がいたします。
 図は、二十七、八から三十くらいの中嫁御が――眉を剃ったあとの、薄青い、ほん色白の京の嫁御の半身像でして、日傘をもった一人立ちのものです・・・

Copyright© 一般社団法人 青空朗読. All Rights Reserved.