畔柳 二美 作 おもしろい話読み手:成 文佳(2023年) |
私は、北海道で生れて、北海道で育ち、二十才をすぎてから上京して、三十代を関西で送った。私の父は東北出身だったので、東北のズーズー弁と、北海道生れの、やや標準語に近い母の言葉を手本に私は成長した。私の父は、たいていの品物の下に「こ」をつけて話した。
例えば、「あそこの娘っこは、いい娘っこだが、まだ、こつこの犬っこをいじめているようでは、本当のいい娘っことは、いえないな」
たいへん機嫌のいい時など、父は、こんなふうに云った。北海道では、父と同じように「こっこ」という言葉はあるが、つづけて、「娘っこ、こつこ」とは云わないので、私たちは、そんなときには腹をかかえて笑った・・・