岡本 かの子 作 花子読み手:池戸 美香(2023年) |
花子には二人の男と二人の女の兄弟があります。花子はそのまんなかに生れました。五つの部屋の真中に花子は眠ります。
晴れ晴れとした春の野辺。ひばりが空高く啼きお陽さまの裳裾がゆらゆらとゆれかがやいて居ます。そして咲き乱れた花が一ぱい! 人は花子のほか誰れも居ません。おかしいとおもいました。少し淋しくありました。が花子は直ぐそれを忘れました。
「摘み草して遊ぼうや」
花子の手近につくしん坊が一本ありました。肥えて丈の高いつくしん坊です。
「つうくし、つうくし」
ぽきんと花子が折ろうとするとつくしん坊は声をあげました・・・