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高村 光太郎

智恵子抄 山麓の二人

読み手:Juliko Miyao(2023年)

智恵子抄 山麓の二人

著者:高村 光太郎 読み手:Juliko Miyao 時間:2分28秒

二つに裂けて傾く磐梯山の裏山は
険しく八月の頭上の空に目をみはり
裾野とほく靡いて波うち
芒ぼうぼうと人をうづめる
半ば狂へる妻は草を藉いて坐し
わたくしの手に重くもたれて
泣きやまぬ童女のやうに慟哭する
――わたしもうぢき駄目になる
意識を襲ふ宿命の鬼にさらはれて
のがれる途無き魂との別離
その不可抗の予感・・・

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