有島 武郎 作 燕と王子読み手:水野 久美子(2023年) |
燕という鳥は所をさだめず飛びまわる鳥で、暖かい所を見つけておひっこしをいたします。今は日本が暖かいからおもてに出てごらんなさい。羽根がむらさきのような黒でお腹が白で、のどの所に赤い首巻きをしておとう様のおめしになる燕尾服の後部みたような、尾のある雀よりよほど大きな鳥が目まぐるしいほど活発に飛び回っています。このお話はその燕のお話です。
燕のたくさん住んでいるのはエジプトのナイルという世界中でいちばん大きな川の岸です――おかあ様に地図を見せておもらいなさい――そこはしじゅう暖かでよいのですけれども、燕も時々はあきるとみえて群れを作ってひっこしをします・・・