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田中 貢太郎

おいてけ堀

読み手:齋藤 こまり(2022年)

おいてけ堀

著者:田中 貢太郎 読み手:齋藤 こまり 時間:8分32秒

 本所のお竹蔵から東四つ目通、今の被服廠跡の納骨堂のあるあたりに大きな池があって、それが本所の七不思議の一つの「おいてけ堀」であった。其の池には鮒や鯰がたくさんいたので、釣りに往く者があるが、一日釣ってさて帰ろうとすると、何処からか、おいてけ、おいてけと云う声がするので、気の弱い者は、釣っている魚を魚籃から出して逃げて来るが、気の強い者は、風か何かのぐあいでそんな音がするだろう位に思って、平気で帰ろうとすると、三つ目小僧が出たり一つ目小僧が出たり、時とすると轆轤首、時とすると一本足の唐傘のお化が出て路を塞ぐので、気の強い者も、それには顫えあがって、・・・

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