2025-12-09

津波てんでんこと親父

津波てんでんこ

津波がおきたら、他の人のことは気にせず、それぞれで逃げろ」という意味だ。

いい教訓だと思った

それぞれで逃げることにより、それぞれの生存率は高まる

実際に逃げる人が増えることでみんなの正常性バイアスを破る効果もある

個にも、全体にもいい最適な戦略

あるとき、非常に強い台風が住んでる場所を襲った

警報避難指示も出た

我が家木造一戸建てコンクリ建てで背の高い近くの避難所に行くのがいいと思った

けれど俺以外の家族は、避難しようとはしなかった

かにしたことにはならない予感もしていた

だが「津波てんでんこだ」と思ったので、俺だけが避難した

今回が大したことなくても、避難する習慣をつけるのは良いことだ

結局、その日、被害も何もなく、特に何も起こらなかった


数年経って、故あって実家が引っ越すことになった

親父はコンクリの、丈夫なマンション上方にこだわって探しているようだった

なんでかと聞いたら、親父は小さくこういった

だって、お前あんとき逃げただろ」

俺はハッとした

親父はあの時のことを気にしていた

ひょっとすると、静かに傷ついていた


なんとなく、気まずく感じた

俺がいざというとき家族を見捨てる側の人間だと糾弾された気がしたのだ

津波てんでんこ」は合理的で優れた考えだ

今もそう思っているし、もし何かあっても一人で逃げる

正しい行動だから

しかし正しいことは、気まずくもある

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