ロラン・セアックは、月から地球にやってきた17歳の少年だ。月と地球を巡る争いに巻き込まれて∀ガンダムのパイロットとなり戦うことになる。無垢でひたむきなロランは、どこか朴さんに重なるイメージがある。
ところが、朴さんによれば「私はディアナ役のつもりでオーディションを受けにいったんです。ところがオーディションではロランの台本を渡されて読まされました」とのことだ。いまでこそ少年役は朴さんの代表的な役柄のひとつだが、当時は男性の役は思いもしなかった。
「『ブレンパワード』で冬馬由美さんが少年役を演じているのをみて驚いたぐらい」というから晴天の霹靂かもしれない。しかし、それが朴さんの代表作となり、やがて数々の少年役の系譜につながっていく。
実際にロランを演じるにあたっては苦労が多かった。そもそも少年というものが分からず戸惑ったようだ。例えば、第5話の「ディアナ降臨」である。ロランが股間を打って男性ならではの痛みを感じるシーン。朴さんは、「だって、私は男じゃないから分からない」と当時は思ったと話す。少年役ならこの人という朴さんの若き日のエピソードだ。
しかし、むしろ富野監督はそうした無垢な朴さんの演技を求めていたようだ。当時監督は、「そのまま演技するように」と朴さんに話したという。