Google検索広告で、宣伝対象のウェブサイトや商品の数が非常に多く、広告文を出し分けることやキーワードを網羅的に追加することが大変と感じたことはありませんか?
その問題を解決するための手段のひとつに、Google 広告の「動的検索広告(Dynamic Search Ads、略称DSA)」があります。
動的検索広告を使用すれば、サイトと説明文を設定するだけで、ページの情報にもとづき関連性の高い検索語句を見つけ、広告文を自動で生成してくれるため、通常の検索広告よりも設定の手間がかからずにキーワードの網羅性を高めることができます。
今回は、動的検索広告の仕組みや設定方法について詳しく解説していきます。
目次
動的検索広告とは?
動的検索広告とは、あらかじめ指定したサイトのコンテンツにもとづき、自動でターゲティングし、広告見出しを自動生成して表示させる広告です。
ユーザーが検索した語句と、指定したサイトコンテンツで使用されているフレーズとを自動でマッチングして配信します。
動的検索広告のしくみ
動的検索広告は、設定したページのタイトルやコンテンツでよく使用されているフレーズと関連する語句がGoogleで検索された際に表示されます。
設定したページをGoogleがクロールすることで、ページに関連する検索語句を見つけます。
ランディングページは、検索語句と関連性の高いフレーズが含まれているページが自動で選択され、広告見出しは、指定したページのタイトルやコンテンツでよく使用されているフレーズにもとづき、検索語句と関連のあるテキストが自動で生成されます。
例えば、求人サイトは次のように広告が表示されます。
検索語句:東京 ITエンジニア 求人
広告見出し:ITエンジニアの求人 - 東京|アナグラム
広告文のランディングページ:東京都のITエンジニアの求人ページ
また、広告見出しは、指定したページをGoogleがクロールした際、Google広告の編集ポリシーにもとづき若干のテキスト変更が起こります。
大文字を小文字に変換、サポート対象外の文字の削除が自動で行われます。この変更を気にされるクライアントもいると思います。基本的には、広告を開始する前に若干のテキスト変更が自動で行われることを伝えておいた方が良いでしょう。
動的検索広告のメリット
動的検索広告には、キーワードを補う役割とキーワードや広告設定の半自動化を担う役割の2つの側面があります。それらを踏まえたうえで、動的検索広告のメリットを説明します。
検索のトレンドは常に変化している
動的検索広告のメリットのお話に移る前に、少しデータは古いものになりますが、2013年にGrow Business with Google & Google Partnersで発表された検索にまつわるトリビアを紹介します。
1. 検索語句が3語以上で構成されている割合は54%
これは、例えば「アメリカ 格安 航空券」のような3つの言葉以上で検索される割合が全体の54%であることを示しています。
2. 過去6ヶ月に検索されたことのない、新規検索語句の割合は20%
さまざまなインターネットサイトやマスメディアなどで生まれた言葉など、過去6ヶ月のデータでは存在しなかった、新しい言葉を含んだ検索語句が全体の20%であることを示します。
3. 入札キーワードと完全に一致しない検索語句の割合は70%
入札キーワードが「アメリカ 航空券」(キーワードのマッチタイプはインテントマッチ(旧:部分一致)とします)である場合、検索語句が「アメリカ 航空券」といったように、入札のキーワードと検索語句が完全に一致する割合が30%、検索語句が「アメリカ 航空券 格安」「格安 航空券 アメリカ」など、入札のキーワード「アメリカ 航空券」と完全に一致しない割合が70%であることを示します。
施策側の私たちが考えるよりも多くのユーザーは、3語以上の長めの検索語句で検索をかけていることがわかります。
実際の検索語句レポートなどを見ていると、たとえば旅行会社のサイトのタイトルやキャッチコピーのコピペによる新しい語句であったり、語句の組み合わせではなくて文章で検索される傾向も強くなってきている現実を踏まえますと、ヒトの思考だけでのキーワードの洗い出しには限界が出てくるということは想像にたやすいのではないでしょうか。
音声検索も増えつつあるなか、検索語句の多様化は今後も続くことが予測でき、検索語句をすべてキーワードで網羅するのは現実的ではないでしょう。
このような検索語句の動向に対して、Google 広告が提供しているひとつの手段が「動的検索広告」です。
キーワードだけでは網羅できない検索語句をカバーできる
設定したページと関連性の高い検索語句に対して広告が配信されるため、入稿したキーワードだけでは網羅できない検索語句までカバーできます。競合も広告配信していないような検索語句にも配信される可能性もあります。
検索語句と関連性の高い広告の出稿が期待できる
動的検索広告では、設定したサイトの情報にもとづき、検索語句と関連のある広告見出しが自動で生成されます。そのため、検索語句と関連性の高い広告をつねに出稿できます。
入稿の手間が削減できる
サイトURLと説明文を設定するだけで、キーワードや広告見出しの設定は必要ありません。
設定したサイトの情報をもとに広告を表示する検索語句は自動でマッチングされ、広告文のタイトルも自動生成されるため、キーワードやランディングページの数が膨大な場合でも設定の手間がかかりません。
動的検索広告が推奨されないケース
ウェブサイトの作りによっては動的検索広告の使用が推奨されないケースもあります。
ページ情報が頻繁に更新される
たとえば、毎日セールを実施していてページ情報が頻繁に更新されるケースでは、動的検索広告は不向きです。なぜなら、変更した内容がターゲティングや広告見出しにすぐに反映されるとは限らないため、ページ情報の更新頻度があまり高いと、つねに最新の情報で広告配信ができない可能性があるからです。
インデックスされたページが少ない
単品通販サイトなど、インデックスされたページが少ない、もしくはほとんどない場合は、工数面でのメリットを享受しにくいです。
ただし、もちろん効果がないわけではないので、キーワードの網羅性を高めるために動的検索広告を取り入れてみることはおすすめです。
ページ情報がGoogleが識別できるように最適化がされていない
広告見出しの生成において、「HTML タイトル」が最も重要な要素となります。そのため、タイトルがGoogleが識別できるように最適化されていない場合、上手く自動生成されない可能性があります。
ほかにも、 ログインしないとアクセスできないサイトや、 Flashコンテンツや画像が多いサイトは、ページのテーマやフレーズをGoogleが識別できません。Googleが識別可能な情報のみに基づいた配信となってしまうため、動的検索広告の効果を十分に発揮することができないでしょう。
動的検索広告の設定方法
動的検索広告は独自の設定項目が多く、どれを選んだら良いか、迷う方も少なくないでしょう。
そこでこの章では、設定内容と選び方にふれながら、動的検索広告の設定方法をわかりやすく解説していきます。
キャンペーン設定の手順
キャンペーン設定では、動的検索広告で使用するドメインや言語、ターゲティングソース(※)を設定します。
※ターゲティングソースとは、動的検索広告のターゲティングや広告文の自動生成の基となるURLなどのデータです。
1.キャンペーンを選択して「+」をクリックして「新しいキャンペーンを作成」を選択します。
2.キャンペーンの目標を選択します。今回は例として「販売促進」を選択します。
3.任意でキャンペーンで最適化するコンバージョン目標を選択します。
4.キャンペーンタイプ「検索」を選択します。
5.キャンペーン名を記入して「続行」をクリックします。
6.予算と単価設定を設定し、「次へ」をクリックします。
7.配信するネットワークを選択します。
デフォルトでは、Google 検索パートナーとディスプレイネットワークのチェックボックスにチェックが入っています。今回は動的検索広告を配信したいので、「Google ディスプレイネットワークを含める」のチェックを外します。
また、Googleの検索結果のみに配信を行いたい場合は「Google 検索パートナーを含める」のチェックも外しておきましょう。
8.地域と言語を設定します。
9.「動的検索広告の設定」をクリックします。
10.動的検索広告で使用するドメインを入力します。
11.動的検索広告で使用する言語を選択します。
マッチさせる検索語句や広告見出しの言語を指定します。デフォルトでは、キャンペーンで設定した言語が反映されます。サイト内に異なる言語のページが混在する場合は、言語ごとにキャンペーンを分けて広告文の説明文も言語設定に合わせて設定しましょう。
12.ターゲティングソースを選択して「次へ」をクリックします。
各ターゲティングソースの違いは、次のとおりです。
項目 | 説明 |
自分のウェブサイトのGoogleインデックスを使用する | Googleインデックスを使用してURLを指定します |
自分のページフィードのURLのみを使用する | ページフィードを使ってURLを指定します |
自分のウェブサイトのGoogleインデックスと自分のページフィードのURLを両方使用する | Googleインデックスとフィードの両方を使用してURLを指定します |
「自分のウェブサイトのGoogleインデックスを使用する」は、広告管理画面上でドメインまたは特定のページグループ、個別のページを設定するだけで(動的広告ターゲットで設定します。詳しくは次で解説します。)簡単に動的検索広告をはじめられます。Gogoleがクロールしやすいようにある程度サイト構造(テーマごとに明確にディレクトリが分かれているなど)が整っている場合はこちらの方法が簡単でおすすめです。
ページフィードを使用する場合は、「自分のページフィードのURLのみを使用する」にチェックを入れます。ページフィードとは、動的検索広告の場合はURLの情報をまとめたリストのことです。ターゲティング対象をページ単位で管理したいときはページフィードを使用します。また、後述する動的広告ターゲット設定で、URLごとにラベルをつけられるため、ラベルをフラグにして広告文の出し分けや配信の有無も設定可能です。
もし階層ごとにテーマが整っているページとそうでないページの両方をターゲティング対象としたい場合は、「自分のウェブサイトのGoogleインデックスと自分のページフィードのURLを両方使用する」を選択しましょう。
広告グループ設定の手順
広告グループでは、動的広告ターゲットを設定します。
動的広告ターゲットとは、動的検索広告のターゲティングや広告文を自動生成する際に使用するURLの指定を行います。
13.広告グループ名を記入します。
14.次に、動的広告ターゲットを設定します。
カテゴリやフィードのカスタムラベル、ページのタイトル、URL、などを使用して対象のURLを設定します。
設定方法は、大きく4つあります。それぞれの違いを解説します。
①お客様のサイトにおすすめのカテゴリ
検索キャンペーンで使用しているすべてのランディングページや、サイトの構造に応じて自動でおすすめされる「カテゴリ」より対象を設定します。
このカテゴリでは、検索キャンペーンのすべての広告グループで配信している、すべてのランディングページがターゲットの対象となります。
その他のカテゴリ
指定したウェブサイトのコンテンツにもとづいて自動で生成された「カテゴリ」を選択して対象となるURLを設定します。例えば、電子機器のECサイトの場合、「デジタルカメラ」「TV」「ビデオ レコーダー」などといったカテゴリが表示されます。
また、後述する「③特定のウェブページ」の「カテゴリ」でも同様な設定が可能です。
②フィードのカスタムラベル
ページフィードのカスタムラベルを使用して対象のURLを設定します。
③特定のウェブページ
URLを個別に一つずつ入力するか、独自のルールを作成して対象となるURLを設定します。
「対象とするウェブページのルールを設定する」場合の設定方法は次のとおりです。
項目1 | 項目2 | 項目3 |
URL を個別に指定する | - | URLを一つずつ設定する |
対象とするウェブページのルールを設定する | カテゴリ | 指定したウェブサイトのコンテンツにもとづいて自動で生成された「カテゴリ」を選択して設定します |
カスタムラベル | ページフィードのカスタムラベルを使用して設定します | |
ページコンテンツ | ぺージコンテンツ内の語句を指定して設定します。 特定の商品ページのみを指定したいが、商品数が多く1つ1つURLでの設定が難しい場合などにおすすめ |
|
ページタイトル | ウェブぺージのタイトルに含まれる語句を指定して設定します。 商品ページのタイトルに商品ジャンルの記載があるなど、タイトル名にある程度ルールがある場合に活用できます。 例)ページタイトル「システムエンジニア_東京都の求人」に含まれる語句「システムエンジニア」を指定する |
|
URL | URLに含まれる文字列を指定した設定が可能です。 例)文字列「/blog/」を含むURLを指定する |
④すべてのウェブページ
設定したドメインに含まれるすべてのページを対象URLとして設定します。
広告設定の手順
動的検索広告では、最終ページURL・広告見出し・表示URLは自動生成されるため、「説明文1」と「説明文2」のみを設定します。
15.最後に、広告文の設定をします。
「説明文1」と「説明文2」のみを設定し、「完了」をクリックで設定内容の確認画面に移るので、設定内容が問題なければ「キャンペーンを公開」をクリックで設定完了です。
動的検索広告の運用のコツ
動的検索広告はキーワードや広告設定を半自動化できる便利さゆえに、配信を開始したときの状態のままの方も多いのではないでしょうか。
また、どこを修正すれば改善されるのかがわからない方もいると思います。
そこでこの章では、ターゲティングの精度をあげてより検索語句と関連する広告を出すための運用のコツを紹介します。
配信対象としたくないページは除外設定する
ドメインまたは特定のページグループでURLを指定している場合、配信対象としたくないページは除外設定しましょう。
例えば、次のようなケースです。
- 広告配信の目的と関連しないページを除外したい
例)会社概要ページ、採用ページ - 動的検索広告のコンバージョン単価を下げたい
例)求人・不動産系の検索サイトで検索結果0件のページ
動的広告ターゲットで設定したページ群に除外したいコンテンツが含まれている場合は、除外設定することをおすすめします。
設定方法は次のとおりです。
除外動的広告ターゲットの設定方法
除外動的広告ターゲットの設定方法を解説します。
キャンペーンまたは広告グループで設定できますが、今回は例としてキャンペーンでの設定手順を紹介します。
①キャンペーン選択してメニューより「動的広告ターゲット」を選択し、「除外動的ターゲット」をクリックします。
②「+」ボタンをクリックします。
④除外の対象となるページを指定するルールを設定します。
特定のURLのみを除外したい場合は「URLを個別に設定する」を、それ以外に条件を設定したい場合は「対象とするウェブページのルールを設定する」を選びましょう。
各設定方法の違いについて詳しくは、動的検索広告の設定方法の手順⑭の「3.特定のウェブページ」をご確認ください。
⑤「追加」を選択し、右側の選択済み欄に追加されたか確認して「保存」をクリックして設定完了です。
意図通りの広告配信になっているかを確認する
動的検索広告を配信開始したら、実際にどのような検索語句に配信されていて、どのような広告見出しが生成されているかを確認しましょう。
次の内容を確認します。
- 検索語句
- 検索語句とランディングページとの関連性
- 広告文のタイトル
確認方法は以下です。
キャンペーンまたは広告グループを選択して「動的広告ターゲット」の「検索語句」を選択します。
表示方法は3種類あります。
表示方法 | 説明 |
検索語句とランディングページ | 検索語句・広告見出し・ランディングページごとのデータ |
検索語句 | 検索語句ごとのデータ |
ランディングページ | ランディングページごとのデータ |
「検索語句とランディングページ」を選択しておけば、すべて確認できます。
もし思ったような広告見出しではなかった場合は、ページのタイトルと見出しを見直すことをおすすめします。
広告見出しを生成する際、最も重要な要素は「HTML タイトル」です。
広告見出しの文字数に合わせて全角30~45 文字(半角 60~90 文字)以内にしたり、行動を促すフレーズなど、広告見出しに使用したい表現を追加することで、意図どおりの広告見出しになります。
通常の検索広告よりも低い入札価格を設定する
広告アカウント内で入札しているインテントマッチ(旧:部分一致)キーワードにおいて、動的検索広告の広告ランクが高い場合は、入札キーワードよりも動的検索広告が優先して表示されるケースもあります。
そのため、動的検索広告を導入したいけれど、表示される広告文はできる限りコントロールしたい場合には、入札価格の強弱を「通常の検索広告>動的検索広告」とすることで、動的検索広告の広告ランクが入札キーワードの広告ランクを超えないようにし、徐々に入札金額を変更させていくのがよいでしょう。
また、通常の検索広告と比べ、動的検索広告の入札金額が大幅に安く設定されているにも関わらず、動的検索広告が優先して表示されてしまう場合は、入札キーワードに紐づく広告の品質が低い可能性がありますので、広告の見直しなども視野に入れましょう。
まとめ
多様化は今後も続くことが予測でき、検索語句をヒトの思考だけで網羅するのは現実的ではないでしょう。
もちろん検索キーワードを想像して設定することも大切ですが、動的検索広告のようなテクノロジーを活用することが重要ですね。