遠心力でボールは打てないけれど
英国出身のゴルフ教師アーネスト・ジョーンズの古典的な著書SWING THE CLUBHEAD(クブヘッドを振れ)では、細かい体の動きを忘れクラブヘッドの動きを感じて振ることの大切さが説かれています。リストを使ってぶっ叩くこと(HACKING)を止め、クラブヘッドを手と指で制御することで力が出せることを学べば、上手の仲間入りができるというのです。
ハッキング(ぶっ叩き)の場合は、インパクトでグリップを右に押してヘッドを左に押すというように、ヘッドと手の動きが逆方向になる梃子の動きがある。スイングではすべてが中心の周りに同方向に動く、これすなわちCENTRIFUGAL FORCE(遠心力)である、と説明しています。
ゴルフについて書かれたものには、しばしばこの「遠心力」という言葉が登場します。例えば、インパクトではリストを柔らかくして遠心力で打つ、というような表現です。感覚的には、体の中心から外側に向かって飛び出していくヘッドの持つ力で打つ感じを受けます。しかし、遠心力を文字通りに解釈すれば、腕の引きの動きに釣り合って反対方向に働く力で、腕がクラブを引っ張って始めて発生するもの、ということになります。
そこで「遠心力を感じて振る」と言えば、ヘッドの負荷(重さ)を感じるように引っ張るという意味になりますが、これでクラブの自然な動きを引き出すには、道具としてのクラブの特性と、体の動きの構造が問題になります。結局、適切な体の動きとはどんなものかを知らなくては、クラブの自然な動きも分からない。動きの説明抜きに「遠心力を感じて振る」などと言われても、これからスイングを作ろうとするゴルファーにとっては何の役にも立たないことになります。
結局、ボールを真っ直ぐ(左へ)打つには、ヘッドを左へ直線的に引っ張る自然で強力な体の動きを捉えるのが先決問題になります。実際に前記の書物には、椅子に腰掛けてドライバー風のクラブを振るジョーンズの写真があり、大きく右に反ったシャフトの先端に、ボールに向けて左へ引かれるヘッドが映し出されています。そこには、脚や腰などの動きを考えてスイングするのは心理的に有害で、手を振れば体は自然に動くという説明があります。
ジョーンズの著書に紹介されている事実、彼が第一次世界大戦で右下腿を失い、四ヶ月後の病院からの復帰翌日、前半38、後半ひどく疲れて45と、左脚一本で83のスコアで回ったことと照らし合わせれば、この説明の深い意味を読み取ることができます。ゴルフの金言の一つ「犬(体)が尻尾(シッポ:手と腕)を振る」のように、体の動きの優先を強調するのは誤りで、不要な体の動きを抑え、「尻尾に犬を振らせる」必要がある(!)と言っているのです。
ハッキング(ぶっ叩き)の場合は、インパクトでグリップを右に押してヘッドを左に押すというように、ヘッドと手の動きが逆方向になる梃子の動きがある。スイングではすべてが中心の周りに同方向に動く、これすなわちCENTRIFUGAL FORCE(遠心力)である、と説明しています。
ゴルフについて書かれたものには、しばしばこの「遠心力」という言葉が登場します。例えば、インパクトではリストを柔らかくして遠心力で打つ、というような表現です。感覚的には、体の中心から外側に向かって飛び出していくヘッドの持つ力で打つ感じを受けます。しかし、遠心力を文字通りに解釈すれば、腕の引きの動きに釣り合って反対方向に働く力で、腕がクラブを引っ張って始めて発生するもの、ということになります。
そこで「遠心力を感じて振る」と言えば、ヘッドの負荷(重さ)を感じるように引っ張るという意味になりますが、これでクラブの自然な動きを引き出すには、道具としてのクラブの特性と、体の動きの構造が問題になります。結局、適切な体の動きとはどんなものかを知らなくては、クラブの自然な動きも分からない。動きの説明抜きに「遠心力を感じて振る」などと言われても、これからスイングを作ろうとするゴルファーにとっては何の役にも立たないことになります。
結局、ボールを真っ直ぐ(左へ)打つには、ヘッドを左へ直線的に引っ張る自然で強力な体の動きを捉えるのが先決問題になります。実際に前記の書物には、椅子に腰掛けてドライバー風のクラブを振るジョーンズの写真があり、大きく右に反ったシャフトの先端に、ボールに向けて左へ引かれるヘッドが映し出されています。そこには、脚や腰などの動きを考えてスイングするのは心理的に有害で、手を振れば体は自然に動くという説明があります。
ジョーンズの著書に紹介されている事実、彼が第一次世界大戦で右下腿を失い、四ヶ月後の病院からの復帰翌日、前半38、後半ひどく疲れて45と、左脚一本で83のスコアで回ったことと照らし合わせれば、この説明の深い意味を読み取ることができます。ゴルフの金言の一つ「犬(体)が尻尾(シッポ:手と腕)を振る」のように、体の動きの優先を強調するのは誤りで、不要な体の動きを抑え、「尻尾に犬を振らせる」必要がある(!)と言っているのです。
体の回転で腕を振る?
ある国際会議で面白い経験をしたことがあります。日本人の発表者が立て板に水という具合に、流れるような英語で話を続けています。残念ながら、私の耳では内容が追い切れないのです。ところが、発表が終わった時、隣に座っていた友人(アメリカ人)が、お前は彼の話が分かったかと聞くのです。否、と答えると、俺にも分からないと言うのです。
高いトップから流れるような動きでフィニッシュまで振り切る上手なゴルファーの動きに人々は感嘆します。振り切ったクラブを担いでボールの行方を眺める後ろ姿も目に美しく映ります。しかし、普通のゴルファーがこれを参考にすると、流れるような発音で通じない英語を話した日本人と同じ危険にさらされます。
どうすれば英語が話せるようになるのかと英国人に聞いても、言葉の専門家でもない限り返事に困るでしょう。普通の日本人の大人が感じる英語の難しさは、子供の時に英語が身についた人には理解できない筈です。ゴルフも、いつの間にか上手になってしまった人には、100を切るのに苦労する人の経験する難しさは分からないでしょう。
上手なゴルファーが、しばしば「体の回転で打つ」、あるいは「体の回転で腕を振る」というような表現をするのを聞きます。これを聞くと、思わず体を振り回してクラブを振る気になります。しかし、手と腕の動きが如何に微妙なものであるかは、前回の右腕で金槌を振る簡単な実験でもはっきりと体感できました。
よくよく考えてみると、実際のスイングのインパクトでも、右の肘から手を結ぶ前腕と手の動きがどうなっているのかは、なかなか確信が持てないものです。頭で考えても分かりませんから、また金槌を振ってみましょう。金槌を握った右手のグリップを右脇前に下ろし、腰を右に回し、そこから左に回して金槌の動きを見ると、ヘッドの左側面(クラブのフェース面)がやや上を向くようにして、急激に左へ引き込まれます。
この腕の動きは、意志の力で変えようとしても難しい。腰を回す代わりに左右に振ると、ヘッドがボールをすくうような動きが現れます。これだけの実験でも、漠然と体の動きで腕を振ると、インパクトで思いがけないヘッドの動きが現れることが明瞭になります。普通のゴルファーにとっては、「体の回転で打つ」というような表現は、危険千万なものであることが分かります。いわゆるヘボ(平凡)ゴルファーは、難しい環境で生きているのです。
高いトップから流れるような動きでフィニッシュまで振り切る上手なゴルファーの動きに人々は感嘆します。振り切ったクラブを担いでボールの行方を眺める後ろ姿も目に美しく映ります。しかし、普通のゴルファーがこれを参考にすると、流れるような発音で通じない英語を話した日本人と同じ危険にさらされます。
どうすれば英語が話せるようになるのかと英国人に聞いても、言葉の専門家でもない限り返事に困るでしょう。普通の日本人の大人が感じる英語の難しさは、子供の時に英語が身についた人には理解できない筈です。ゴルフも、いつの間にか上手になってしまった人には、100を切るのに苦労する人の経験する難しさは分からないでしょう。
上手なゴルファーが、しばしば「体の回転で打つ」、あるいは「体の回転で腕を振る」というような表現をするのを聞きます。これを聞くと、思わず体を振り回してクラブを振る気になります。しかし、手と腕の動きが如何に微妙なものであるかは、前回の右腕で金槌を振る簡単な実験でもはっきりと体感できました。
よくよく考えてみると、実際のスイングのインパクトでも、右の肘から手を結ぶ前腕と手の動きがどうなっているのかは、なかなか確信が持てないものです。頭で考えても分かりませんから、また金槌を振ってみましょう。金槌を握った右手のグリップを右脇前に下ろし、腰を右に回し、そこから左に回して金槌の動きを見ると、ヘッドの左側面(クラブのフェース面)がやや上を向くようにして、急激に左へ引き込まれます。
この腕の動きは、意志の力で変えようとしても難しい。腰を回す代わりに左右に振ると、ヘッドがボールをすくうような動きが現れます。これだけの実験でも、漠然と体の動きで腕を振ると、インパクトで思いがけないヘッドの動きが現れることが明瞭になります。普通のゴルファーにとっては、「体の回転で打つ」というような表現は、危険千万なものであることが分かります。いわゆるヘボ(平凡)ゴルファーは、難しい環境で生きているのです。
手と腕の微妙な動き
ゴルフの上手な人は、決まった形で腕を振り、クラブを振ります。普通のゴルファーは、一発打つ度にいろいろ動きの作り方を考えます。どうしても体の大きな動きに注意が集中します。ところが、あの「モダン・ゴルフ」で有名なベン・ホーガンの第一章は、「良いゴルフは良いグリップで始まる」という言葉で始まります。
これに続いて詳しいグリップの説明がありますが、どのようなグリップが良いグリップなのかは、良い体の動きがどんなものかが決まらなくては、はっきりしません。こうなると、鶏が先か卵が先かの議論になり、途方に暮れる気分になります。
そこで、直接グリップの仕方の影響を確認する方法を考えてみます。重いクラブを振る代わりに、軽い金槌で釘を打つ動きを作ってみます。右利きの場合、右手に金槌を握り、親指と人差し指に力を入れて柄を両側から挟み、右脇前で釘を打つように振ると、金槌の頭(ヘッド)の正面が地面方向を向いて止まります。
そこで、今度は中指、薬指、小指の後ろ三本の指で柄を握り、親指と人差し指を浮かせて同じように振ってみます。すると、振られたヘッドが止まった所から、ヘッドの左側面が体の前の方に向けて左へ振られる動きが現れます。始めに少し大きく振り上げて振り下ろせば、この動きが腕の自然な働きで現れるのを、はっきり確認できます。
ベン・ホーガンは、右の親指と人差し指を外して握れば、両手の強くて正しいグリップの感覚に慣れるのに有効であると指摘しています。ところが上記の簡単な実験は、より具体的に、右手の後ろ三本指によるグリップが、ヘッドの振り下ろしの動きから強力な横の動きを生み出す仕組みを与えることを示しています。
この仕組みの働きを確認すれば、重いヘッドを振り下ろしてその惰性でボールを横方向に打つという、簡単で強力な動きを誰でも利用できることになります。
これに続いて詳しいグリップの説明がありますが、どのようなグリップが良いグリップなのかは、良い体の動きがどんなものかが決まらなくては、はっきりしません。こうなると、鶏が先か卵が先かの議論になり、途方に暮れる気分になります。
そこで、直接グリップの仕方の影響を確認する方法を考えてみます。重いクラブを振る代わりに、軽い金槌で釘を打つ動きを作ってみます。右利きの場合、右手に金槌を握り、親指と人差し指に力を入れて柄を両側から挟み、右脇前で釘を打つように振ると、金槌の頭(ヘッド)の正面が地面方向を向いて止まります。
そこで、今度は中指、薬指、小指の後ろ三本の指で柄を握り、親指と人差し指を浮かせて同じように振ってみます。すると、振られたヘッドが止まった所から、ヘッドの左側面が体の前の方に向けて左へ振られる動きが現れます。始めに少し大きく振り上げて振り下ろせば、この動きが腕の自然な働きで現れるのを、はっきり確認できます。
ベン・ホーガンは、右の親指と人差し指を外して握れば、両手の強くて正しいグリップの感覚に慣れるのに有効であると指摘しています。ところが上記の簡単な実験は、より具体的に、右手の後ろ三本指によるグリップが、ヘッドの振り下ろしの動きから強力な横の動きを生み出す仕組みを与えることを示しています。
この仕組みの働きを確認すれば、重いヘッドを振り下ろしてその惰性でボールを横方向に打つという、簡単で強力な動きを誰でも利用できることになります。