『週刊プレイボーイ』2月16日号に、「派遣より過酷!? 急増する『ワーキングプア公務員』の悲鳴!~正職員と同じ仕事をしても年収200万円以下、突然の解雇におびえる日々…」と題した記事が掲載されました。この記事は、国公一般・杉山書記長が取材を受けて企画されたものです。記事の一部を紹介します。(byノックオン)
「公務員ほど安定した生活を得られる職業はない」、そう思う人も多いだろう。その認識は正しくもあり、間違いでもある。今や全公務員の約3割を占める非正規職員は、派遣社員同然の差別的待遇に苦しんでいる。「ワーキングプア公務員」の悲痛な叫びを聞け!
◆非正規職員の賃金は“物件費”として計上
昨年末、大阪府の橋下徹知事は「経費削減」政策の一環として、府立学校に勤務する教職員(つまり、地方公務員)346人の今年度いっぱいでの解雇をブチ上げた。その346人の対象者は全員が非正規の職員である。
国家・地方を問わず、非正規公務員は大ざっぱに非常勤(1日の労働時間や週の労働日数が短い。1年契約を毎年更新)と臨時(数カ月間だけの契約勤務)の2種類に分けられる。
そして、これらの非正規公務員は近年、その数を急激に増やしている。現在、国家公務員約45万人のうち約14万人、地方公務員約290万人から警察・消防・教育を除いた約142万人のうち50万人超と、今や公務員全体の約3割を占めるほど。
非正規公務員の賃金は、“人件費”ではなく“物件費”として計上され、なんと、非正規の職員はモノ扱い! 労働環境は劣悪そのもの。正職員と同じ仕事をこなしている人も多いのに、法律上、短期間の契約しか結べず、多くが低賃金、低収入にあえぐ。まさに“官製ワーキングプア”と呼べる状態だという。
◆日雇い状態で働く非正規の国家公務員
「霞が関には正職員約4万人以外に約1万3千人もの非正規職員がいて、その多くが月収20万円未満です」
こう話すのは、国家公務員であれば、省庁、正規・非正規を問わず加入できる『国家公務員一般労働組合』の杉山書記長だ。
霞が関では、省庁によって交通費や賞与、退職金など各種手当ての有無に違いがある。試しに総務省のホームページで非常勤職員の募集情報を見ると、「日給は最大で8,926円」となっている。これは、月20日勤務なら約18万円の計算。月16日未満の出勤になると交通費も支給されない。
そして、杉山氏が最も問題視しているのが、非正規の国家公務員の多くが国家公務員法に基づき「日々雇用」という労働形態、つまり日雇いで働いていることだ。
「上司から『オマエのクビなんて、いつでも切れる!』と恫喝されたり、突然クビにされたという相談も寄せられています。また、ほとんどの省庁で、非正規が働けるのは最長3年で期間延長もない」(杉山氏)
ある省庁の非正規職員A氏(30代男性)がこう怒る。
「やる仕事が補助業務なら、まだわかります。でも本来、国家試験合格者しか携わることのできない『法案作成事務』や、『秘書業務』『調査票とりまとめ』といった正規の仕事までやらされています。今や非正規なしで国の公務は回らないのが実情。なのに、サービス残業はあれど、有給休暇も退職金もなく3年で雇い止め。まさに使い捨てですよ!」
それにしても、なぜ労働基準監督署はこうした眼前のヒドイ現状を放置しているのだろう?
「国家公務員には労働基準法が適用されないんです。民間企業ではパート労働法に『パートも常勤職員と同等に扱え』と定められているので簡単に解雇できませんが、非正規の国家公務員にはその保障がない」(杉山氏)
◆安易な民間委託のツケは一般市民に回ってくる
厳しい労働環境下でもがんばる非正規職員たちに、いま追い討ちをかけているのが、公務を民間企業に丸投げする「民間委託」である。民間委託の結果、「低コスト化」の名目の下、賃下げをする現場がいくつも現れた。入札は最低額を提示した企業が落札。その低予算の運営では賃下げとなるのは当然。
場合によっては、解雇されるケースもある。例えば、東京都中野区は区立保育園の民間委託を決め、04年3月、28人の非常勤保育士全員を解雇した(その後、4人が区を相手に裁判を起こし、裁判所によって法律の不備が認められ職場復帰を果たした)。
総務省によると、07年1月までに、全国の1万1252の公共施設(プールやジム、老人ホーム、駐車場、図書館、庁舎事務など)で民間委託が行われており、多くの非正規公務員が解雇されているという。そして、安易な民間委託は公共サービスの質を著しく低下させる恐れもある。最後に伊藤氏(東京公務公共一般労働組合書記長)の言葉を噛み締めたい。
「見せかけの公務員削減に拍手喝采していたら、いつの間にか自分たち(一般市民)の首を絞めることになっていた…なんてことになりかねません」