去年公約通りに政府が初めて貧困率を調査して1年たちます。
しかし貧困問題に関してあれから何の政策も採られず、状況は何にも変わりません。もちろん貧困率も高いままです。
せっかく貧困率を調査しても、それを改善する政策がとられなければ何の意味もありません。
セイフティネットの張り直しや派遣法見直しなど、貧困問題を解決する抜本的政策は全く手つかず。牛の歩みどころか、完全に停滞したままです。
新政権発足から1年以上たつのに、政府はこれら待ったなしの政策に何故ちっとも取りかかることができないのでしょう?
私にはその理由がまったくわかりません。
そんななか、今年は派遣村開村が見送られることになったようです。
そういえば去年石原都知事が、もう派遣村なんかやらないって随分不機嫌にしてましたから、それが一番の理由なのかも。
「派遣村」見送りへ 年越し前の支援強化
産経新聞 11月10日(水)1時0分配信
失業者のセーフティーネット(安全網)を検討する国の会合が9日開かれ、仕事のない生活困窮者を対象とした職業紹介や生活支援対策を年末に向けて強化していくことを確認した。昨年末から今年初めにかけ、国や東京都が失業者に食事や宿泊場所を提供した「公設派遣村」は開設せず、年越し前に再就職や住居の確保を進める方針。
会合には内閣府や厚生労働省などの担当者が参加。今年は「派遣村」を必要とするような事態にならないよう、11~12月にかけて職業紹介と生活支援の相談を1カ所で受け付けるワンストップ・サービスを全国140地域で実施するほか、就職説明会や就職支援セミナーも172地域で開くことを決めた。
厚労省の小宮山洋子副大臣は同日、「昨年は年末年始に住居の提供や就業の相談を行ってきたが、大事なのは年間を通して(対策に)取り組んでいくこと。全力を挙げて(役所が開いている)12月28日までやっていく」と述べた。
派遣村をめぐっては、平成20年末、雇用情勢が悪化し、派遣契約の打ち切りで住居をなくすなどした失業者を援助しようと、支援団体や労働組合などが東京・日比谷公園で「年越し派遣村」を開催。昨年末は、国が1億5千万円の費用を負担して都が「公設派遣村」を設置し、860人が入所したが、石原慎太郎都知事は今年末は派遣村へ協力を行わない方針を示している。
「大事なのは年間を通して(対策に)取り組んでいくこと。」というのはその通り正論です。従って「年間を通して対策に取り組み効果もあがっているから、もうあらためて年末の派遣村を開く必要はなくなった」というのなら話は分かります。
でもお世辞にもそうだとは言えないのに派遣村を開かないと決めたのは、生活困窮者の意向より派遣村が大嫌いな都知事の意向を優先したから。
で、その罪滅ぼしに、年越し前の生活支援強化を行うことにした、という印象を受けます。
しかしこの年末支援強化も官公庁の御用納めの12/28までです。
一昨年末に年越し派遣村が開村されたのは、年末年始は役所が休みでハロワもないのでホームレス等の生活困窮者が特にこの厳寒時期に深刻な状況に陥る危険があったからでした。
それを思えば国や地方公共団体は12/28までで店じまいするのではなく、引き続き生活困窮者が寒さをしのぎ年を越せる支援を行うべきではないでしょうか。
また、去年の派遣村は一昨年と違い都が主体となったのですが、その対応には色々問題がありました。
一昨年派遣村を開設した母体であるワンストップの会がオリンピックセンターの公設派遣村に入ることを東京都が許可しなかったり、訪れた失業者に「ハロワに行け」を繰り返したり、生活保護申請に後ろ向きだったりしたのです。
(関連記事:
東京都の「公設派遣村」がおかしい )
もし今年の年越前の支援強化で去年のような問題ある対応がなされても、派遣村のように衆目を集めないので、そういう情報は表に出てきにくいでしょう。
果たして「ハロワに行け」のリピートや生活保護要請却下の水際作戦が行われないでしょうか。派遣村を開いた場合に比べると、国民の目は届きにくくなりそうです。
派遣村は「貧困問題を可視化して、突きつける」ことに大きな役割を果たしていると思います。
貧困問題というのは放っておけば決して人々の見えないものです。それを見えるようにしたのが派遣村です。
しかし、もしこれをきっかけに今後派遣村が開設されない流れになってしまったら、せっかく可視化しかけた貧困問題が再び見えないところに一歩後退させられ、人々の意識から遠ざけられてしまうような気がします。
貧困問題について自民党政権並みに何もせず、派遣法改正すら遅々として進まない現政権にとって、それはきっと好都合なことでしょう。
日本ではまだまだ貧困問題を可視化していく必要があると私は感じます。
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