子どもに関する政策のついて、二つの報道記事から。
負担増世帯が続出=子ども手当、半額据え置きで―第一生命
7月2日21時0分配信 時事通信
第一生命経済研究所は2日、子ども手当の支給額が現行の月額1万3000円に据え置かれた場合の家計(専業主婦世帯)への影響に関する試算をまとめた。それによると、2013年度までに所得税と住民税の年少扶養控除(16歳未満)が廃止されるため、3歳未満の子ども1人の場合では、年収700万円以下の世帯すべてで負担増となる。
さらに、衆院選マニフェスト(政権公約)で打ち出した配偶者控除の廃止が実施に移されれば、年収300万円、500万円、700万円、1000万円世帯の大半が減収となる計算。財源不足を理由に満額支給(月額2万6000円)を断念した公約修正の問題点が浮き彫りになった。
この問題点は以前から赤旗や日経でも指摘されていました。
児童手当の額は、0歳以上3歳未満は月額一律1万円、3歳以上は第1子、第2子月額5千円、第3子以降月額1万円でした。ないよりマシでしたが「広く薄く」であまり効果はありませんでした。
子ども手当はそれより若干多いだけの1万3千円で、支給年齢も3年延びただけです。満額にも満たない子ども手当の財源ために所得税と住民税の年少扶養控除(16歳未満)を廃止すると減収世帯が増えてしまうなら、いったいなんのための子ども手当なのでしょうか?(ついでに児童手当も廃止です。上乗せではありません)
子ども手当のような新しい制度を始めるに当たって、今の税や社会保険等の負担のあり方の下で所得税と住民税の年少扶養控除(16歳未満)を廃止して子ども手当を実施した場合、所得の再分配はどのようになるのか、かえって不公平な結果にならないかを調査してから始めるモノだと私は思ってました。
でも不公平な結果を招いているのですから、民主党はシミュレーションもしないでどんぶり勘定で始めたと言わざるを得ません。
「子どもの健やかな育ちを社会全体で応援する」という子ども手当の趣旨を生かせるのは所得再分配が機能している状態であってこそだと思います(
こちら)
民主党さん、今からでもおそくありませんから、子ども手当の財源作りプラス子ども手当を生かすためにも、逆進性の強い消費税増税をやめ、大企業優遇税制を見直し、高額所得者の税率をせめて元に戻して、あるべき累進課税制度の姿にしませんか。高額所得者も子ども手当をもらえるけど、その代わり税金はガッツリ払っている、という形にしなければ誰が見てもただの高額所得者優遇の不公平な制度に堕してしまいます。
なんなら法人税を上げて子ども手当の財源にしてくれての良いのですよ(笑)
子どもに関してもう一つ見逃せないこと。
<高校無償化>留年・再入学生授業料 19都県「原則徴収」
7月3日2時36分配信 毎日新聞
公立高校の授業料無償化を巡り、留年生徒や卒業後に再入学した生徒について、全国の都道府県の約4割に当たる19都県が原則として授業料を徴収する方針を決めたことが、毎日新聞の調査で分かった。このほか4県は再入学生のみ徴収する方針で、授業料を支払うことになる留年生・再入学生は少なくとも計948人(6月28日現在)になる見通し。24道府県は原則不徴収の方針で、対応が全国でほぼ二分された。
4月に施行された高校無償化法は、国が公立高校生(専攻科は除く)の授業料相当額を都道府県に交付するよう定めた。ただし対象は標準修業期間(全日制3年、定時・通信制4年)内の生徒。この期間を超えた生徒で「不徴収が生徒間の負担の公平を損なう特別の事由」がある場合は学校設置者(都道府県や政令市など)が授業料を徴収できるとした。
毎日新聞が各都道府県の教育委員会に対し標準修業期間を超えた生徒への対応を調べたところ「原則徴収」の自治体は、36カ月以上在学すると無償にならない私立と公平にするため(岩手県)などの理由を挙げた。千葉県は再入学生について「学習意欲がある」と徴収対象から除外。また、各自治体とも留学や病気などの場合は徴収しないとしている。
一方、全国の自治体で最も早い3月中旬に「原則不徴収」を決めた京都府は「徴収すれば(経済的負担の軽減と機会均等を目指すとした)法の趣旨に合わず、勉学の機会提供に公平さが必要」とコメントした。香川など4県は再入学生からは徴収する方針で、このうち兵庫県は「(再入学は)生涯学習の意味合いがあり、高校無償化の趣旨と違う」とコメントした。
法政大の尾木直樹教授(臨床教育学)は「高校授業料無償は国際常識で、学力を養うことは国家の問題。すべて無償にすべきだ」と話す
これは留年生徒や卒業後に再入学した生徒についても無償化することをナショナルミニマムとせず地方に任せた民主党政権の問題でもありますが、同時に「国の温情でタダにしてやっている」という意識が政府と教育委員会にまだまだはびこっているという問題でもあります。
留年等、「やる気のない」と見なされた子どもに授業料を請求するというのは、国の温情に報いなかった懲罰として恩恵をはく奪するかのようですね。
そもそも高校無償化の趣旨は何でしょうか。
国際人権規約A規約第13条の2(b)には「種々の形態の中等教育はすべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること」と定められており、無償化はその理念を実現するために行われるものです。
「全ての者」とは高校で学ぶ者なら一律にすべて認めよう、という意味です。「やる気のある者は授業料を免除してやろう」という性質のものではありません。
これは例えば、ちょうど「全ての被告人」に黙秘権や弁護人選任権が与えられているのと同じようなものです。
「反省している良い被告人」には弁護人選任権を認めてやってもいいし、冤罪なら黙秘権を認めていい、というような性質のものではありません。その被告人が極悪であろうがあるまいが関係なく、被告人という立場にある人間には全て自動的に認められる権利です。
再入学や留年組も当たり前ですが「高校で学ぶ全ての者」に含まれるのであり、彼らから授業料を徴収するのは国際人権規約の理念に合致せず、間違っていると思います。
またこれは地方によって差があっていいものでもありません。
「授業料無償化とは国の恩恵温情である」というのが政府の根本的な論理なのではないでしょうか?そのような論理だからこそインターナショナルスクールは無償化しておきながら朝鮮学校は無償化しないという差別を堂々と行えるのです。だって「日本人を拉致した敵国」の子ども達に恩恵、温情を与えるいわれはないのですから。
「恩恵温情」と捉えていることが政府や教育委員会の人権意識の後進性を表していますね。
朝鮮学校外しは人種差別であると国連からも非難されていますが、これはある意味、ドロップアウト組差別とでも言えるかもしれません。
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