34歳結婚詐欺女の実名を伏せた報道について
- 2009/11/12
- 10:00
犯罪報道について過去、思うところをいくつか書いてきました。
舞鶴女子高生殺人事件、千葉東金女児遺棄事件ー未だにこんな犯罪報道をしていていいのでしょうか!?【追記あり】
裁判員制度と犯罪報道を考える
裁判員制度と犯罪報道を考えるー補足・麻生邸ツアー事件
裁判員制度にふさわしい報道ができているでしょうか
裁判員制度にふさわしい報道ができているでしょうか(2)
報道被害をなくし、公正な裁判を行うために
足利事件の当時の報道についてのメモ
改善されない犯罪報道
犯罪報道は情報の受け手に予断と偏見を抱かせてはいけない、無罪推定の原則を徹底させる。
これにつきるので毎回だいたい似通った内容になってしまうのですが、時々実例に即して見ていくことも大切だと思います。
で、メインディッシュの前にオードブルを少々。
先日何気にニュース番組から流れてきた殺人事件で、アナウンサーの言葉が引っかかったのでメモ。(ニュースバリューがないのでおそらくこれ一回きりの報道だと思います)
ホームレスが公園で殺され知人の男が逮捕された事件だったのですが、逮捕された男性は否認していたにもかかわらず、「殺害現場である公園に何食わぬ顔で戻ってきたところを逮捕・・・」という言い方をしていました。
ほんの一言ですが、この男性が犯人で間違いないという前提にたった表現です。
そして「犯人は現場に帰ってくるって言うが、何食わぬ顔で戻ってくるとは愚かで図々しいヤツ」という印象を持つ人もいるでしょう。
これは単に「殺害現場である公園を通りがかったところで逮捕された」という表現でいいのではないでしょうか。
文字で残る新聞と違い、一度きりでそのまま消えていくテレビでの犯罪報道では、こういう偏見を助長する無責任な短い一言がちりばめられてることが多いと感じます。
さてメインディッシュです。
34歳女性の連続男性不審死疑惑で実名、顔が伏せられている件について
まず、メディアが一律に実名と顔を伏せたのは、正しい判断だと思います。
このニュースは報道するのならば、実名も顔も自主規制するのが無罪推定原則に沿っています。逮捕すらできない段階でこの女性が殺人を犯していると決めつけるのは間違いです。
今までも冤罪を晴らした人々は、極悪な人格であるかのように印象報道された経験を持ちます。菅谷さんしかり河野さんしかり。こういう報道被害は無くさなければいけません。
ロス疑惑の時は逮捕される前から名前、顔はもちろんのこと、連日どれほど酷いプライバシー侵害がなされたかわかりません。それに比べたら、いくばくかはメディアの良識は進歩したと言えます。
しかし、逮捕前ならばもう一歩進んだ配慮が欲しかったと思います。
即ち、たとえ実名を伏せ顔にモザイクをかけても、あたかも連続殺人とこの女性を結びつけるような報道は控えるべきだったのです。
なぜなら、ここまで事件を詳細を報道してしまうと、今後もし逮捕されたらその時には既に予断が山のように形成されてしまってるからです。特にこの段階の報道は真実や嘘や誇張が混ざってなされるから、何が正しく何が間違いなのか区別のしようがありません。
そして逮捕されなかった場合でも、彼女の周囲の人間は彼女だと察しはつくでしょうから、やはり人権侵害になります。
従って、今の段階では、そもそもモザイクをかけてまで報道する必要はないし、いずれ裁判員になる可能性のある私達はこいうい情報を知るべきではないと思います。
逮捕前、ということはまだ証拠不十分で逮捕に踏み切れるほど警察も確信が持てない、ということです。マスコミは既に決定的というニュアンスで報道していますが、もしそんなに容疑が固まってるならとっくに逮捕しています。しかし現実は逮捕に至ってないのだから、報道は割り引いて聞いておく心構えが必要でしょう。
特に「稀代の悪女」みたいな週刊誌的ゴシップは視聴者ののぞき見的な好奇心が強いため、メディアは争ってスクープを欲しがって先走り、針小棒大に誇張したり悪女ぶりをおもしろおかしく書き立てるおそれがありますから。
メディアはこの女性と不審死の関連に確信をもっていると主張するでしょうが、もしその主観が間違いであったときには、取り返しのつかない報道被害を生みます。
菅谷さんのケースを振り返ってみましょう。
DNA鑑定でDNAが一致したという警察発表をうけて、メディアはこれは絶対間違いないと確信して報道しました。
しかし事実はどうだったでしょうか。
そのDNA鑑定自体の精度は低かっただけでなく、その鑑定方法で再鑑定してみたら菅谷さんのDNAと一致しなかったのです。つまり科警研は鑑定を失敗していたのに、警察もマスコミも100%それを正しいと信じ込んでいたのです。
この教訓は生かさなくてはいけません。
何度も繰り返しますが、
所詮記者クラブで配給された警察の一方的な発表なのだから、単なる一情報としてだけ受け止め、決して信じ込まないのがリテラシーです。
それが第二第三の河野さん、菅谷さんを生まない効果的な予防法の一つなのです。
私にはこの女性が不審死と関係あるかどうかわかりません。そんなこと今の段階でわかる一般市民は一人もいません。わかっているのは、これが警察の一方的発表でしかない以上、確定的ではない、と言うことだけです。実名をふせようとモザイクをかけようと、彼女が誰かわかる人にはわかるのだから、確定的であるかのように報道してはいけないのです。
ところがこの件の場合、東スポ等で実名と顔がスクープされてしまいました。東スポのメディアとしての良識を疑わざるを得ません。
問題はその後です。
もうこの女性は誰だか国民は知ってしまったのだから、いくら実名無しでも、実名報道されてるのと実質同じです。それなのに素知らぬ顔で報道し続けるのは、各メディアは人権侵害の確信犯ではないですか。
残念ながら、罰則がなければ東スポのように売れれば何でもありという良識のないメディアも存在するのですから、こういう事態は予想できてたはずです。
このような危険があることを考えても、やはり逮捕前は報道を避けるべきだったと思います。
舞鶴女子高生殺人事件、千葉東金女児遺棄事件ー未だにこんな犯罪報道をしていていいのでしょうか!?【追記あり】
裁判員制度と犯罪報道を考える
裁判員制度と犯罪報道を考えるー補足・麻生邸ツアー事件
裁判員制度にふさわしい報道ができているでしょうか
裁判員制度にふさわしい報道ができているでしょうか(2)
報道被害をなくし、公正な裁判を行うために
足利事件の当時の報道についてのメモ
改善されない犯罪報道
犯罪報道は情報の受け手に予断と偏見を抱かせてはいけない、無罪推定の原則を徹底させる。
これにつきるので毎回だいたい似通った内容になってしまうのですが、時々実例に即して見ていくことも大切だと思います。
で、メインディッシュの前にオードブルを少々。
先日何気にニュース番組から流れてきた殺人事件で、アナウンサーの言葉が引っかかったのでメモ。(ニュースバリューがないのでおそらくこれ一回きりの報道だと思います)
ホームレスが公園で殺され知人の男が逮捕された事件だったのですが、逮捕された男性は否認していたにもかかわらず、「殺害現場である公園に何食わぬ顔で戻ってきたところを逮捕・・・」という言い方をしていました。
ほんの一言ですが、この男性が犯人で間違いないという前提にたった表現です。
そして「犯人は現場に帰ってくるって言うが、何食わぬ顔で戻ってくるとは愚かで図々しいヤツ」という印象を持つ人もいるでしょう。
これは単に「殺害現場である公園を通りがかったところで逮捕された」という表現でいいのではないでしょうか。
文字で残る新聞と違い、一度きりでそのまま消えていくテレビでの犯罪報道では、こういう偏見を助長する無責任な短い一言がちりばめられてることが多いと感じます。
さてメインディッシュです。
34歳女性の連続男性不審死疑惑で実名、顔が伏せられている件について
まず、メディアが一律に実名と顔を伏せたのは、正しい判断だと思います。
このニュースは報道するのならば、実名も顔も自主規制するのが無罪推定原則に沿っています。逮捕すらできない段階でこの女性が殺人を犯していると決めつけるのは間違いです。
今までも冤罪を晴らした人々は、極悪な人格であるかのように印象報道された経験を持ちます。菅谷さんしかり河野さんしかり。こういう報道被害は無くさなければいけません。
ロス疑惑の時は逮捕される前から名前、顔はもちろんのこと、連日どれほど酷いプライバシー侵害がなされたかわかりません。それに比べたら、いくばくかはメディアの良識は進歩したと言えます。
しかし、逮捕前ならばもう一歩進んだ配慮が欲しかったと思います。
即ち、たとえ実名を伏せ顔にモザイクをかけても、あたかも連続殺人とこの女性を結びつけるような報道は控えるべきだったのです。
なぜなら、ここまで事件を詳細を報道してしまうと、今後もし逮捕されたらその時には既に予断が山のように形成されてしまってるからです。特にこの段階の報道は真実や嘘や誇張が混ざってなされるから、何が正しく何が間違いなのか区別のしようがありません。
そして逮捕されなかった場合でも、彼女の周囲の人間は彼女だと察しはつくでしょうから、やはり人権侵害になります。
従って、今の段階では、そもそもモザイクをかけてまで報道する必要はないし、いずれ裁判員になる可能性のある私達はこいうい情報を知るべきではないと思います。
逮捕前、ということはまだ証拠不十分で逮捕に踏み切れるほど警察も確信が持てない、ということです。マスコミは既に決定的というニュアンスで報道していますが、もしそんなに容疑が固まってるならとっくに逮捕しています。しかし現実は逮捕に至ってないのだから、報道は割り引いて聞いておく心構えが必要でしょう。
特に「稀代の悪女」みたいな週刊誌的ゴシップは視聴者ののぞき見的な好奇心が強いため、メディアは争ってスクープを欲しがって先走り、針小棒大に誇張したり悪女ぶりをおもしろおかしく書き立てるおそれがありますから。
メディアはこの女性と不審死の関連に確信をもっていると主張するでしょうが、もしその主観が間違いであったときには、取り返しのつかない報道被害を生みます。
菅谷さんのケースを振り返ってみましょう。
DNA鑑定でDNAが一致したという警察発表をうけて、メディアはこれは絶対間違いないと確信して報道しました。
しかし事実はどうだったでしょうか。
そのDNA鑑定自体の精度は低かっただけでなく、その鑑定方法で再鑑定してみたら菅谷さんのDNAと一致しなかったのです。つまり科警研は鑑定を失敗していたのに、警察もマスコミも100%それを正しいと信じ込んでいたのです。
この教訓は生かさなくてはいけません。
何度も繰り返しますが、
所詮記者クラブで配給された警察の一方的な発表なのだから、単なる一情報としてだけ受け止め、決して信じ込まないのがリテラシーです。
それが第二第三の河野さん、菅谷さんを生まない効果的な予防法の一つなのです。
私にはこの女性が不審死と関係あるかどうかわかりません。そんなこと今の段階でわかる一般市民は一人もいません。わかっているのは、これが警察の一方的発表でしかない以上、確定的ではない、と言うことだけです。実名をふせようとモザイクをかけようと、彼女が誰かわかる人にはわかるのだから、確定的であるかのように報道してはいけないのです。
ところがこの件の場合、東スポ等で実名と顔がスクープされてしまいました。東スポのメディアとしての良識を疑わざるを得ません。
問題はその後です。
もうこの女性は誰だか国民は知ってしまったのだから、いくら実名無しでも、実名報道されてるのと実質同じです。それなのに素知らぬ顔で報道し続けるのは、各メディアは人権侵害の確信犯ではないですか。
残念ながら、罰則がなければ東スポのように売れれば何でもありという良識のないメディアも存在するのですから、こういう事態は予想できてたはずです。
このような危険があることを考えても、やはり逮捕前は報道を避けるべきだったと思います。
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