第一次安倍内閣の時に悲願だった教育基本法改訂をやった安倍総理ですが、その安倍教育基本法がじわじわ力を発揮し、いよいよ戦前の国家統制教育を「トリモロス!」と動き出しました。
首長に教育長罷免権 再生会議 関与大幅強化を提言
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013041502000040.html
安倍晋三首相肝いりの政府の教育再生実行会議(座長・鎌田薫早稲田大総長)は十五日、教育長に教育行政の責任を一元化し、首長が議会の同意を条件に教育長の任命・罷免権を持つことを柱とする教育委員会制度改革の提言書を首相に提出した。事実上、首長の教育行政への関与を大幅に強化する内容で、教育の政治的中立性をめぐり、議論を呼ぶのは必至だ。
提言は「教育行政の権限と責任を明確にするため、地域の民意を代表する首長が、連帯して責任を果たせるような体制にする必要がある」と指摘。具体的には、首長が教育長を任命・罷免できるようにし、教育長を教育行政の責任者と位置付けるよう求めた。
教育委員会の役割を「地域の教育のあるべき姿や基本方針などについて審議を行い、教育長に大きな方向性を示し、教育事務の執行状況をチェックする」と定義。政治的中立性の確保のため「教育長が教育の基本方針や教育内容に関する事項を決定する際には、教育委員会が審議するなどの制度上の措置を講ずる」ことを求めた。
だが、教育委員会の審議内容が教育長の意思決定にどの程度影響力を持つかどうかは提言には盛り込まず、詳細な制度設計は、今後の下村博文文部科学相の諮問機関の中央教育審議会(中教審)での審議に委ねた。
さらに提言は、地方教育行政への国の関与について、原則、地方自治体が判断し、責任を負うとした上で「自治体に法令違反や(いじめ自殺など)子どもへの人権侵害があった場合は、最終的には国が是正、改善の指示を行えるようにする」ことを盛り込んだ。下村文科相は「来週にも中教審に諮問し、来年の通常国会には改正案を出したい」と述べた。
現行の教育委員会は、首長が議会の同意を得て任命する原則五人の有識者らで構成。教育長以外は非常勤のため会合も月一、二回程度しか開かれず、「審議が形骸化し、いじめ自殺などの際に迅速な意思決定ができない」と批判されていた。
<教育委員会> 原則5人の有識者らで構成する機関で、教育行政を担う。都道府県や市町村に設置されている。導入は1948年。戦争を肯定した戦前の教育に対する反省を踏まえ、教育の政治的中立性や継続性の観点から、首長からは独立している。委員は議会の同意を得て首長が任命。うち1人が常勤の教育長に選ばれ、実務を担う事務局を統括。他の委員は非常勤で、1人が代表者として互選で教育委員長に選ばれる。
赤旗にもリンクを張っておきますので、お読みください。
●
教育長に権限集中
教育委「改革」再生会議提言 国・首長の統制強化http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-04-16/2013041601_02_1.html#首長が教育長の生殺与奪の権限を持てば好きなように政治介入できるようになってしまい、教育の政治的中立性はなくなります。
教育委員会は首長からの独立性、政治的中立性を確保するために設置された独立行政委員会のはずですが、これでは首長の政治支配を遂行する出先機関と化してしまいそうです
(ちなみに大阪では教育委員会を廃止し、教育の直接支配を狙ってるようです)
また、教科書検定を強化して、より教育内容に介入しようとしています。沖縄集団強制死で軍の責任を削除した検定よりもさらに凄いことになりそうです。
教科書検定、見直し検討=下村文科相
時事通信 4月10日(水)10時38分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130410-00000034-jij-pol
下村博文文部科学相は10日午前、衆院予算委員会の集中審議で、教科書検定制度について「現状と課題を整理し、見直しについて検討したい」と述べ、近現代の歴史に関して近隣アジア諸国への配慮を目的として検定基準に定めている「近隣諸国条項」などの見直しに意欲を示した。
安倍晋三首相も「第1次安倍内閣で教育基本法を変えたが、残念ながら検定基準には改正教育基本法の精神が生かされていない」と指摘した。
自民党は昨年の衆院選公約で「教科書検定基準を抜本的に改善し、近隣諸国条項も見直す」と明記している。下村氏は「客観的な学問的成果に基づいて、正しく学び、誇りを持った日本人としてのアイデンティティーが確立されることが大変重要だ」と強調した。自民党の西川京子、日本維新の会の中山成彬両氏への答弁。
下村氏も歴史修正主義者であのトンデモ似非科学である親学推進議連に所属してますから、文科相にはなってはならぬ人です。
もう少し詳しい報道をブログ
「大阪弁で世情を語る」さんが紹介してくださっていたのでお持ち帰り。
慰安婦:日本政府、歴史教科書からの削除を推進へ (朝鮮日報日本語版:2013/04/11)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130411-00000506-chosun-kr
日本政府が、旧日本軍の従軍慰安婦強制動員などの内容を歴史教科書から削除するため、教科書検定制度の見直しを推進する動きを見せている。
下村博文・文部科学相は10日、国会答弁で「日本に生まれたことを誇らしく思えるような歴史認識が教科書に記載されるようにしていく必要がある」として、教科書検定制度の見直しを検討していくと述べた。これは自民党の西川京子議員が「教科書には日本軍が従軍慰安婦を『性的奴隷』と見なしていたとの記述があるが、これは自虐史観だ」として、教科書検定制度の見直しを求めた質問に対する答弁だ。日本の極右は従軍慰安婦について、日本軍が強制動員したのではなく、自発的だったと主張している。
安倍晋三首相もこの日の国会答弁で「残念ながら、教科書の検定基準が、愛国心や郷土愛を尊重することとした改正教育基本法の精神を生かせないものとなっている。自負心を持てるようにすることが(教育の)基本だ。教育的な観点から教科書が採択されるかどうか検討していく必要がある」と述べた。
安倍首相や下村文科相の発言は、最近検定に合格した高校用の一部の教科書に、日本軍が慰安婦を強制動員したという記述が盛り込まれていることを指摘したものだ。安倍首相は昨年末の衆議院議員総選挙で「慰安婦が強制動員されたという証拠がないだけに、強制動員を認め謝罪した『河野談話』の見直しが必要だ」と主張している。
また、安倍首相は総選挙の際、教科書の「近隣諸国条項」を廃止し、自虐史観から脱皮する教育を進めることを公約に掲げた。日本は1982年「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに、国際理解と国際協調の見地から必要な配慮をする」という内容の近隣諸国条項を教科書検定の基準に追加した。教科書の記述に関し、近隣諸国に配慮するというものだ。だが、同条項が削除されると、日本の「侵略」が「進出」などといった記述に書き換えられる可能性がある。
やっぱり「慰安婦」
安倍総理の歴史歪曲は総理就任前から国際社会で非難が相次いだことはブログでも取り上げました。
慰元慰安婦に対する謝罪と賠償と併せ、慰安婦問題を教科書に掲載して学習に取り入れることは人権委員会からも勧告されているのに、またしてもそれにそっぽをむく安倍政権。
おまけに「近隣諸国条項」まで廃止し、侵略戦争の反省を捨てて開き直るとは。
安倍総理の歴史修正主義の執念は並々ならぬものがありますが、そんなに国際社会から孤立したいのでしょうか。
とうとう「つくる会」の教科書でなければ検定が通らないまできてしまったのかもしれません。子供達はみな、「自虐史観を捨て、戦後レジウムを脱却し、美しい国=大日本帝国時代を取り戻せ!」というわけです。
これがヨーロッパだったら国家犯罪ですね
まさに戦前のように教育が権力によって統制される道に逆戻りです。
準憲法といわれた旧教育基本法、とくに教育に対する不当な支配禁止を定めた旧10条が現16条に改訂されてしまったことで、政治が教育支配することが「不当な支配」とはされなくなってしまいました。
あらためて教育基本法の立憲的性格が奪われてたことの大きさをひしひし感じます。
教育基本法改悪に反対したこちらの論説を読みかえすことにします。
◆国民教育文化総合研究所
憲法違反の新教育基本法は即時に廃止を!
(引用開始)
新教育基本法第16条は、「教育は、不当は支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきもの」とする。政府は、この点について、「国家が教育行政をやることについて不当な介入であるとの解釈は採っていない」といい、「不当な支配をする」主体について、「国会で決められた法律と違うことを特定のグループ、団体が行う場合」を言うと説明。現行教育基本法とは全く逆方向の法律である。
もともと、現行教育基本法は、戦前にあって国家が教育に介入して軍国主義教育になったことを反省して作られたもので、同法第10条は、教育と教育行政を分離し、教育行政への教育内容等への介入・支配を禁じることが主たる趣旨であり、第1項の「不当な支配」をする主体には教育行政が入ることがありうると考えられていた。
だからこそ第10条では1項と2項を対比させている。現行教育基本法では、不当な支配禁止の名宛人は国家である。旭川学力テスト最高裁判決(76年5月21日)でも「不当な支配」は「法令に基づく教育行政機関の行為にも適用される」としている。
新教育基本法では、「法律に基づけば」どのような教育内容・方法も可能であり、どのような制限も可能とされることになる。法律とは政党政治の下で多数決原理で制定されるものであるから、今後は教育内容・方法が多数決原理で決定されることになる
しかも、国会答弁では、単なる告示であって大綱的基準でしかない「学習指導要領」(前掲の最高裁判決)も第16条にいう「法律」に含まれることになる。とすれば、こうした「学習指導要領」と異なる考えを教えることは法律違反だとなる。
さらに、「他の法律」として、(国歌=「君が代」、国旗=「日の丸」と規定しただけの)国旗国歌法を挙げ、この強制を義務付ける「法律」とする旨の答弁を行っている。つまり、政治的原理で多数派が決めた教育内容や教育行政が決めた教育内容のみを教授することを可能とするのである。
前記旭川学力テスト最高裁判決は、「国民全体の教育意思は、国会の法律制定で具体化されるものであるから、法律は、当然に、公教育における教育の内容及び方法についても包括的にこれを定めることができ、また、教育行政機関も、法律の授権に基づく限り、広くこれらの事項について決定権限を有する」という(当時の文部省)見解を、「極端で一方的」として排斥しているが、政府の新教育基本法第16条の趣旨説明は、ほぼそれと同じである。
しかし、旭川学力テスト最高裁判決は同時に、「内面的価値に関する文化的な営みとして、党派的な政治的観念や利害によって支配されるべきでない教育にそのような政治的影響が深く入り込む危険があることを考えるときは、教育内容に対する右のごとき国家的介入についてはできるだけ抑制的であることが要請される」としている。最高裁判決のこうした論は、憲法第26条および第13条から組み立てたものである。
新教育基本法はこうした憲法論をクリアしないままに、国家が教育を統制し、国家の人材養成として教育を位置づけるものであり、憲法第13条と第26条に違反するものである。
(引用ここまで)
『「国家が教育行政をやることについて不当な介入であるとの解釈は採っていない」といい、「不当な支配をする」主体について、「国会で決められた法律と違うことを特定のグループ、団体が行う場合」を言う』・・・そのうち国家の介入は「不当な支配」ではないが、国民の介入は「不当な支配」、市民グループが君が代不起立の教員を応援することやつくる会教科書採択に反対することは教育基本法違反の「不当な支配」だ、なんて認定されちゃうかも?
この改悪のおかげで今こんな風に易々と政治が教育に介入できるのです。
その憲法違反は明らかなのに司法で問えぬのがもどかしいです。この国には「法の支配」がないのだと感じざるを得ません。
教育基本法改悪は「プレ改憲」だったと思います。
このさき、本当の改憲が待っています。
いつか必ず旧教育基本法を取り戻し、教育を国家から国民の手に取り戻さなくてはいけないと痛切に感じます。
- 関連記事
-