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12月6日 WAVER WAVER PRESENT'S THURSDAY JAPAN TOUR 2019 at 代官山SPACE ODD War All the Time - Thursday オープニング・アクトを務めたENDSWECKが「金曜日なのにサーズデイ」とMCで繰り返し口にしていたが、12月6日、代官山SPACE ODDにて、悲願のTHURSDAY初単独来日公演を観た。THURSDAYのライヴを目にするのは、2004年に行われた日本版のWARPED TOUR以来である。正直な話、この15年の間にバンドは第一線から退いてしまったところがある。いや、実際に一度は解散し、再結成後も新しい作品を発表しては..音楽(2019年)もりた2019-12-09T11:16:53+09:00<![CDATA[
War All the Time - Thursday
開演直前、CAT POWERがBGMでかかり、流れる車窓のように撮影された日本の郊外がスクリーンに映し出された。物寂しいムードが漂うなか、ステージに登場したメンバーたちが最初のナンバーに選んだのは「FOR THE WORKFOCE, DROWNING」である。『WAR ALL THE TIME』(03年)の冒頭で炸裂していたあの掻き毟るほどの焦燥がまざまざと再現され、居ても立ってもいられなくなる。初っ端からすごい勢いで湧き上がるものがある。続いて「CONCEALER」「AOUTOBIOGRAPY OF A NATION」「CROSS OUT THE EYES」「PARIS IN FLAMES」と『FULL COLLAPSE』(01年)からの楽曲が並んでいく。THURSDAYがエモやスクリーモの急先鋒とされていた頃のそれらは、しかし、時が経とうと本質を違えてはいない。衝動に後押しされながら、熱量をぶち上げる一方、明るさとは真向かいのパセティックなイメージが描き出される。アジテーションの激しさとメランコリックなまでの繊細さとが同居したサウンドの類まれな真価を証明するがためにバンドはパフォーマンスを繰り広げているかのようでさえあった。
余談だが、今回のツアーには元LOST PRORHETSのスチュアート・リチャードソンがベースで参加している。THURSDAYのヴォーカル、ジェフ・リックリーとNO DEVOTIONというバンドを組んでいる縁でもあるのだろう。NO DEVOTIONは、ニュー・ウェイヴのエッセンスをふんだんに携えたスタイルになっていたけれど、THURSDAYにおける内省的な側面も、やはりルーツのどこかにニュー・ウェイヴの存在が横たわっているのだと思う。それがハードコアなどに由来したギターの鋭いリフやスリリングでダイナミックな展開を併せ持っているあたりにTHURSDAYの素晴らしさはある。本編のラストを飾ったのは『WAR ALL THE TIME』のタイトル・トラックである「WAR ALL THE TIME」だ。アグレッシヴなパートを抑える代わり、暗く、冷ややかと形容してもいい音色に覆われている。ゆったりとしたテンポで進むナンバーである。しかし、堪えようとすればするだけ漏れてきてしまう怒りや悲しみのようなものが次第に束となり、正しくエモーショナルというのに相応しい波濤を呼び起こす。生々しいライヴのヴァージョンでは、その劇的な印象がより深く極まっていた。
2度のアンコールを含め、およそ1時間、ショーとしては決して長い類ではない。本音を述べると、もっと観ていたかった。それでも物足りなさを覚えなかったのは、内容の濃さに圧倒されたからであろう。完全燃焼に近い満足度がありましたね、といえる。研ぎ澄まされた緊張感は、バンドの音楽性と密接であって、それが全編に張り詰めていたのだった。THURSDAY、まったく枯れていない。
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3月17日 WAVER WAVER PRESENT'S JONAH MATRANGA WITH FRIENDS FEATURING SONGS FROM FAR, GRATITUDE, NEW END ORIGINAL, ONELINEDRAWING at 新宿ANTIKNOCK ああ、このような熱量の高まりを、もっと若い頃、FARやNEW END ORIGINALの活動時に体験していたならば、感受性に大きく影響を受けたであろうな、と思わされる。3月17日、新宿ANTIKNOCKでジョナー・マトランガ(ジョナ・マトランガ、ヨナ・マトランガ)の来日公演を観たのであった。JONAH MATRANGA WITH FRIENDSと題され、FEATURING SONGS FROM FAR, GRATITUDE, NEW END ORIGINAL, ONEL..音楽(2019年)もりた2019-03-24T09:53:59+09:00<![CDATA[
ああ、このような熱量の高まりを、もっと若い頃、FARやNEW END ORIGINALの活動時に体験していたならば、感受性に大きく影響を受けたであろうな、と思わされる。3月17日、新宿ANTIKNOCKでジョナー・マトランガ(ジョナ・マトランガ、ヨナ・マトランガ)の来日公演を観たのであった。JONAH MATRANGA WITH FRIENDSと題され、FEATURING SONGS FROM FAR, GRATITUDE, NEW END ORIGINAL, ONELINEDRAWINGと付された今回のライヴ、注目すべき点は、何といってもやはり、ジョナーのキャリアを築きあげてきた楽曲の数々が、バンド・セットで演奏されたことであって、ここ日本では滅多にないぐらい貴重な機会なのはもちろんなのだけれど、レアだからという理由のみでは収まりきらないほどの感動を、ステージ上のパフォーマンスからは確かに得たのである。
そして、NEW END ORIGINALの「14-41」や「LUKEWARM」FARの「MOTHER MARY」や「BURY WHITE」といったアンセム級のナンバーが惜しげもなく演奏されるのだから、至福と喩えるしかないよ、だろう。参った。とんでもない熱量に圧倒されてしまった。満足げにバックのメンバーがステージ上を去った後、1人残ったジョナーがエレクトリック・ギターを掻き鳴らし、歌いはじめたのは、同郷の盟友であるDEFTONESの「BE QUIET AND DRIVE(FAR AWAY)」だ。ジョナーが、このナンバーを好み、以前よりずっとカヴァーし続けているのは、ファンにとっては周知だけれど、当然、絶品である。胸を衝かれる美しさと激しさは原曲に備わっているものだが、下手なアレンジを加えるのではなく、ジョナーならではの抑揚をメロディに込めることで、実に精度の高い哀切を再現するに至っている。ギター1本と歌声だけで、これほどの深みが生じるのか、という衝撃がある。
アコースティック・ギターを片手に、フロアーへ降りてき、観客のど真ん中に立ったジョナーの弾き語りでライヴはエンディングを迎えるわけだけれど、ソロ名義である『AND』に収録されていた「SO LONG」が非常に眩しかった。ハンド・クラップで応じるオーディエンスとの親密なコミュニケーションのなか、繰り返される〈SO LONG, SO LONG, BE BRAVE, BE STRONG, UNTIL THEN, SO LONG〉というフレーズの、ああ、なんて儚く、力強く、励まされ、心を揺さぶられるもののあることよ。パセティックな響きを目一杯含んでいるにもかかわらず、どこまでもポジティヴなフィーリングを湛えたそのアンビバレンスに詠嘆を禁じえない。スタジオ音源では伝わりにくかった部分が、マイクを通さない生の歌声を通じ、クリアに伝わってきたという印象である。スタンド・アローンのカリスマを放ちながら、同時に周囲の者を触媒にしていく。それがジョナーの本質なのかもしれない、と思わされる。
ラストを飾ったのは、PRINCEのカヴァーである「KISS」だった。アコースティック・ギターのカッティングとファルセットのヴォーカルとがジョナーのファンキーな一面を覗かせる。リスペクトしているアーティストのカヴァーもそうだし、ソロ・キャリアを振り返ったかのような今回のセット・リストは、結果として様々なスタイルの音楽を自由に横断している。特筆すべきは、幅の広い参照項が、しかし、類い稀な歌声を経、ジョナー・マトランガという一貫性に集約されていたことであろう。少年的な繊細さと大胆さをイメージさせるジョナーのヴォーカルは、とにかくスペシャルであって、他に代え難い。ヴィジュアルは中年なりに老けてしまったけれど、その眼差しには、いまだピュアと呼ぶのに相応しい光がキラキラと差していた。
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9月4日 MAGNET SCHOOL JAPAN TOUR 2018 at 新宿NINE SPICES 9月4日、台風の襲来におののきながらも新宿NINE SPICESで米テキサス州出身の4人組、MAGNET SCHOOLの初来日公演を観たのであった。いや、率直な感想を述べるならば、ほとんど無名なのに素晴らしいバンドってまだまだいるんだなあ、というものであって、要するに心を持っていかれてしまった。抜群なライヴだったのである。MAGNET SCHOOLのことを知ったのは、本国で2016年に発表されたセカンド・アルバムの『THE ART OF TELLING THE TRUTH..音楽(2018年)もりた2018-09-06T12:42:59+09:00<![CDATA[
9月4日、台風の襲来におののきながらも新宿NINE SPICESで米テキサス州出身の4人組、MAGNET SCHOOLの初来日公演を観たのであった。いや、率直な感想を述べるならば、ほとんど無名なのに素晴らしいバンドってまだまだいるんだなあ、というものであって、要するに心を持っていかれてしまった。抜群なライヴだったのである。MAGNET SCHOOLのことを知ったのは、本国で2016年に発表されたセカンド・アルバムの『THE ART OF TELLING THE TRUTH』が日本のSTIFF SLACKによって先般CD化されたからなのだけれど、そこで聴かれたのは90年代型のエモとシューゲイザーのミックスを狙ったかのようなサウンドで、たとえばHUMやFAILUREが引き合いに出されるのも、なるほど、わかる。反面、それらのバンドに比べると骨太な印象があり、FOO FIGHTERSあたりに通じそうなわかりやすさ、MUTEMATHなどを例に挙げられそうな柔軟性をも感じられる。繊細であるようなひねりとストレートなほどの熱量とが同居したMAGNET SCHOOLの魅力は、ライヴにおいて、より際立っていたといえる。生の演奏による出力を経、轟音に厚みが増している一方、メロディはきらめき、その轟音の底から浮上していくイメージを強調することとなっていたためであろう。マイクのヴォリュームが足りなかったせいか、少しばかり耳を澄まさなければならなかったものの、2人のギターが交替で兼ねるヴォーカルには、幾度も口ずさみたくなるまでのフックが備わっている。が、やはり、最も目を見張ったのは、ギターとギター、ベースとドラムとが、足し算である以上のアンサンブルを達成していた点だ。ギターやヴォーカルのフレーズは、確かに美しい。しかし、それのみが重要なのではない。どれだけ激しく掻き鳴らそうとコンビネーションをまったく崩さない各パートの力量が、先に述べた轟音の厚みを実現しているのだ。個人的には『THE ART OF TELLING THE TRUTH』に入っている「BRITISH MONUMENTS」をプレイしてくれたのが、嬉しい。リフ、リズム、コーラスの絶妙な配置、どの瞬間を切り出してもハイライトになるようなナンバーである。マイナーなバンドなので、会場は広くないし、観客も決して多くはない。だが、その卓越したパフォーマンスには余りある価値があったし、貴重な体験とは、こういうことを指すのだと思う。
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『群青リフレクション』第2巻 酒井まゆ 酒井まゆの『群青リフレクション』は、その特徴を一つ挙げるなら、芸能活動に身を置く高校生を描いていることなのだったが、最大の魅力となっているのは、ヒロインである柊心晴の無邪気な明るさなのではないかと思う。〈私立船越高校 全8クラス中2クラスが芸能科で レベルはまちまちだけど 芸能界に片足やら両足やらつっこんでる子が通っています 一応 私もその1人なんだけど--〉という心晴の言葉には、自分がまだ全然売れていないことの気後れが含まれていて、確かに有名人が多数を占めるクラスのなか..マンガ(2018年)もりた2018-07-26T14:13:20+09:00<![CDATA[
ある意味で『サイケまたしても』は、大切だと信じられる存在の喪失に抗う人間の姿を描いている。サイケもユメヲもヨハンも、それぞれの方法で、大切だと信じられる存在を悲劇からすくい上げようと戦っていたのである。そこには常に、運命は変えられるのか、という問いが内蔵されていた。他方、能力の起源(オラクルのルーツ)や万物の記録(アカシックレコード)をめぐり、作品は新たな段階に入った。頼れる仲間である氷頭やアナとともにサイケは「またしても」様々な困難を乗り越えなければならないのだろう。そして、おそらくはそのなかでも、運命は変えられるのか、という問いが繰り返されていくのに違いない。
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『THE SHACKLES OF BIRTH』SETSUKO <a href="http://setsukoband.bandcamp.com/album/the-shackles-of-birth">The Shackles Of Birth by Setsuko</a> セツコの読みで良いのかな。どこで知ったのかは覚えていないのだったが、日本人の語感に引っかかるようなバンド名から興味を持った。スウェディッシュ・グラインドコアのニュー・カマー、SETSUKOである。そのファースト・アルバムが『THE SHAC..音楽(2018年)もりた2018-04-03T13:24:00+09:00<![CDATA[
セツコの読みで良いのかな。どこで知ったのかは覚えていないのだったが、日本人の語感に引っかかるようなバンド名から興味を持った。スウェディッシュ・グラインドコアのニュー・カマー、SETSUKOである。そのファースト・アルバムが『THE SHACKLES OF BIRTH』になる。グラインドコアといったけれど、カオティック・ハードコアやブラック・メタル、デス・メタルの影響を、そこかしこに見つけられるし、エモ・ヴァイオレンス、スクリーモを参照したと覚しき激情と旋律とを前面にした楽曲もある。凝っていたり、器用であったりというよりは、これをやりたい的なアイディアと演奏のスタイルとが素直に結びついている印象だ。ファストでギザギザに尖ったサウンドは、鉄腕のストロング・スタイルではなく、細く描かれた線のシャープな切れ味をイメージさせる。音の太さ、濃さ、深さで判断するなら、いくらか頼りなく感じられるかもしれない。が、しかし、若気の至りにも似た勢いがある。思慮や経験、洗練を手引きとしてはいない。初期の衝動のみをモチベーションにした勢い。発展途上ならではの勢いが、一番の魅力となっており、そいつに飲み込まれるのである。現在、BANDCAMPにおいてNAME YOUR PRICEでダウンロードできる。