仕方ないしーなメモ

　女の子の赤面と泣き顔に定評のある作家、水あさと。どのマンガを読んでも作者が描く女の子はそのほとんどが恥ずかしがるか泣くかしている。むしろ恥ずかしがったり泣いたりしていない方が珍しいというか見ないというか、そんなことがあったら作者の正気を疑うレベル。それぐらい作者の描く女の子は辱めを受けたり泣かされたりしている（語弊がある表現）。
　この『制服魔法みどりちゃん』もご多分に漏れず思春期真っ盛り、もとい青春真っ盛りの女子中学生が赤面したり泣いたりする。むしろ赤面したり泣いたりばかりと言ってもいい。つまりこのマンガは素晴らしい。
　では、その素晴らしさの源泉はどこにあるのか。それはこのマンガのために作者が用意した「制服魔法」にある。

　制服魔法。それは女子中学生が制服を着たときにだけ使える魔法である。どういう効果を持つ魔法が使えるかは家系に依存しているらしい。
　表題作の『制服魔法みどりちゃん』に登場する女子中学生のみどりちゃんは制服を着ているときだけ男子にモテる魔法が勝手に発動する。魔法が一度効き始めたら最後、周囲の男子はみなみどりちゃんの虜になり、その効果は男性教諭にまで及ぶ。そして魔法を取り消すには魔法の根源である制服を脱ぐ以外に方法がない。求愛男子に追い回され男性教諭に求婚されるなど制御の利かない魔法に振り回される日々を送るみどりちゃんだったが、そんな彼女には意中の男の子がいた。ところが、このモテ魔法は肝心の本命には効き目がないという代物で、そのことを知ったみどりちゃんは意を決して告白しようとする――。

　みどりちゃんの他にもこのマンガには3人の制服魔法少女が登場する。
　2人目のぼたんちゃんは人の気持ちが増幅して伝わってしまう制服魔法の使い手だ。そのかわいさも手伝って誰もがぼたんちゃんに好意を向けるが、それを増幅して受け続けるため、ぼたんちゃんは常時喘いでいる。変態さんですね。
　3人目のミヤコちゃんは制服を着ると瞬間移動が使えるようになる。ただし下着は移動しない。そのため瞬間移動した後は必ずノーブラ、ノーパンになる。変態さんですね。
　4人目のきいなちゃんは物を浮かせたり軽くしたりとわりと何でもありの万能選手だが、魔法を使うたびにMPよろしく制服が裾から短くなっていき結果的に傍から見るとただの露出狂になる。変態さんですね。

　といった具合に4人の制服魔法少女は制服魔法が使えるだけでなく何らかの変態性癖を持っている（持たされているとも言う）。もちろん今までの作者のマンガと同様に制服魔法少女たちはなんだかんだと泣かされては涙目になった顔を披露し、恥ずかしい姿を見られては赤面する。そんなマンガが素晴らしくないわけがない。
　さらにみどりちゃんとミヤコちゃんには話の相方となる男の子がいる。彼らは制服魔法少女の使う制服魔法のある意味被害者と言えるのかもしれないが、これまた制服魔法少女たちに勝るとも劣らない変態性を発揮してくれる。例えば『制服魔法ミヤコちゃん』の一場面より（p.72）。

　上段で忍び泣いている少年ヒロタカはミヤコちゃんの幼なじみであり、『ミヤコちゃん』の主人公でもある（なお、『ミヤコちゃん』以外は制服魔法少女の視点から語られている）。そのヒロタカが握りしめているのは瞬間移動の際にミヤコちゃんが脱ぎ捨てていった脱ぎたてほやほやのパンツだ。そして下段で号泣している少女が制服魔法少女のミヤコちゃんであり、瞬間移動の直後であるためリアルにパンツはいてないの状態にある。
　で、何が言いたいかというと涙の水滴がいい仕事をし過ぎていて邪魔なんですね。違った。ミヤコちゃんのぬくもりが残るパンツを手に泣くヒロタカがミヤコちゃんのパンツを嗅いでいるようにしか見えないんですね。もう変態さんですね。まったく役得とはこのことだな。ちょっと変わって欲しい（この人です）。

　前述までのようにこのマンガの特徴が女子中学生による赤面×泣き顔×変態性癖の絶妙なコラボレーションだけであれば「この作者、頭おかしい！（褒め言葉）」で終わる。だが、このマンガの本当にニクいところはどの話も「ちょっといい話」になっていることだ。特に女子中学生と男子中学生のラブがコメっている『みどりちゃん』と『ミヤコちゃん』でその傾向が強い。ああニクい！　ニクい！　なんでほっこりさせるんだよド畜生！　泣き顔はかわいいし！　恥ずかしがっている姿はかわいいし！　何もしなくてもかわいいし！　さらにパンツ脱いだり全部脱いだりビクンビクンしたりでエロかわいいし！　その上でイイハナシダナーで落としてくるとか！　作者、本当に頭おかしい！（褒め言葉）

　そういうわけで、『制服魔法みどりちゃん』はいつもどおりの安定の水あさと的なかわいい女の子を楽しめるだけでなく、いつも以上に変態チックな女の子を堪能できる1冊となっている。

【出典】
・水あさと　『制服魔法みどりちゃん』　集英社<ヤングジャンプコミックス>、2014/8/25発行
・となりのヤングジャンプ：制服魔法みどりちゃん→試し読み
・ミルメークオレンジ→作者のサイト

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