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2013年11月02日

【レポート】電子書籍で食える人は、既に他で食えてる人だけ

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<岡田>つまり、電子書籍というのは、既に売れた作家が余命を伸ばすのにはすごく有効だけれど――
<小飼>2013年の8月現在で、電子書籍で食える人というのは、既に他で食える段階にある人だけです。
<岡田>既に食える人。でも、電子書籍の市場が10倍ぐらいになってきたら、“そろそろ”っていう話になってくるわけですよね?


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ひっそりと無料電子雑誌を作ってたりする佐藤家清です。

全4回に渡ってお届けする2013年8月10日に行われた
出版シンポジウム「電子出版ノススメ〜鈴木みそ×小飼弾×岡田斗司夫〜」も今回が最後になります。

今回は電子出版ベースで漫画家として食べていくことは現在可能なのか、
という具体的な話をダイジェストでお送りします。

「電子出版ノススメ~鈴木みそ☓小飼弾☓岡田斗司夫~」レポート【全4回】
 第1回 鈴木みそ:出版社の言う「どうせ売れない本」がベストセラー
 第2回 電子書籍は食えない作家が落ちる最後の墓場なのか?
 第3回 手塚治虫が飢死するほど多様性を好む日本人」
 第4回 電子書籍で食える人は、既に他で食えてる人だけ

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<小飼>
 よく出来た物語世界っていうのは、少なくとも、一人の作家どころか、一つの出版社が、もうかなり長い間食っていけるぐらいの価値があるんですよ。
 だけども、やっぱそこに甘んじてないっていうのは、日本のすごいところだと思いますよ。
「なんで新作が出るんだ?」と。


<岡田>
 でもそれは、これまでの出版体制と今の電子出版体制の狭間だからですよね。
 最初に鈴木さんが「これからの日本で“食っていける漫画家”は下手したら100人ぐらいになってしまう」っておっしゃってたじゃないですか。
 で、弾さんがおっしゃった、「これからもどんどん新しい人が出てくるであろう」。
 この新しい人って、たぶん、9割までは無料で漫画を書いてる人になりますよね?


<小飼>
 まあ、そうなるでしょうね。


<鈴木>
 99%ぐらいかも知れない。


<岡田>
 99%ぐらい?


<鈴木>
 みんな描くけど、タダで描くんですよ。


<岡田>
 じゃあ、それはどうやって――


<小飼>
 たぶん、充分な数のファンを得た時点で、出版社が捕まえて有料化しちゃうんでしょうね。


<岡田>
 それはそうだと思うんですけど。
 その“充分なファンがいる”っていう状態が、これまでだったら「単行本が2万部出るかどうか?」だったじゃないですか。
 今、これを言い換えるとどうなるんでしょうね?


<小飼>
 どうなんでしょうね?


 割りと有名な例で『ソードアート・オンライン』っていうのがあるじゃないですか。
 で、その作者はそっちでばかり有名だけど、彼にもちゃんとデビュー作が別にあるんですね。『アクセル・ワールド』っていう。
 でも、アクセル・ワールドより売れたんですよ。ソードアート・オンラインの方が。

 いや、どっちもすごい売れたんですよ。
 たしかアクセル・ワールドの方が300万部売れて、ソードアート・オンラインの方が700万部売れたんですよ。
 ただ、その代償としてウェブに置いてあった作品というのは全部消されちゃいましたけど。
 だけれども、タダのものがそこまで化けるわけですよ。


<鈴木>
 あとは、“作り方“かもしれないですね。

 新人漫画家もプロも全部入れた電子雑誌みたい枠を作って、そこにはものすごい数の、読み切れないほどの漫画が載っていると。
 そういう様なふうにして毎回連載を続けるんだけど、そこではほとんどお金にならない人となる人の漫画が一緒に載っていて。
 で、その電子雑誌を読んでる中で、「この人をちょっと応援したいな」っていう人が現れた場合、例えば月間とか年間いくらで払える、みたいな。

 そういう、上手くお金が回って行く仕組みを作れれば、無料で書いてる人達にも多少は投げる事が出来るんじゃないかなと。


<岡田>
 ちょっとザッと計算してみたいと思うんですけど。
 さっき話したみたいなAmazonのシステムを利用した場合で。

 まず、漫画家になりたい少年がいると。彼が漫画を描いたと。
 それを出版社に持って行っても上手くいくかどうかわかんないので、“鈴木みそ方式”をやったと。つまり、自分で電子出版社を立てたと。100円でAmazonで売ったと。

 この場合、彼の漫画がもし面白ければ、100円で売ってたとしたら利率が70%で――


<鈴木>
 100円で売った場合ね、今のところは35%までしか取れません。


<岡田>
 35までですか。


<鈴木>
 そう。100円の場合は最大で35%。
 250円を越えないと70%の利率はもらえません。
 そこがなかなか厳しいんですよ。


<岡田>
 じゃあ250円で売ったことにするかな。
 ああ、でも、それではなかなか……たぶん、100円と250円のバージョンを2つ出す事になるでしょうね。
 100円のは“お試し版”として。

 で、お試し版は80ページぐらい。100円で80ページ。
 多すぎるかな? お試しだとしたら。


<鈴木>
 お試しはタダですね。通常は。有料のお試しは厳しいですね。


<岡田>
 じゃあ、こうします?
 250円の本編と、無料のお試し版。


<鈴木>
 設定が細かくてすいません(笑)

(中略)

<岡田>
 じゃあ、50ページを無料で出したとして。

 これがヒットしたら彼は250円でレベニューが70%。
 ということは、彼の手に入るのは、概算で200円弱か。これが年間3万部売れれば600万の年収。
 漫画だけで食ってくのに600万もいらないですよね?


<鈴木>
 そうですね。


<岡田>
 2万部売れれば良いとしましょう。
 これで400万の年収。

 年間2万部も電子出版で売れる漫画家って出来るんですかね?


<小飼>
 まあ、電子書籍というメディアがどの程度まで普及するかにもかかってきますよね。


<鈴木>
 それと、もう1つあるのは。
 1冊250円で売ってる本はおそらく200ページ描いてるんですよ。
 それに対して400万円というのは1ページあたりの単価が2万円ってことですよね。


<岡田>
 はいはいはい。


<鈴木>
 それって、「すごい手間を掛けて、ページ単価2万円で、単行本の印税収入ナシ」と同じ状態なんですよ。原稿料だけで描くのと変わらない。
 つまり、その状況で描くのは厳しいですね。スカスカの漫画にせざるをえない。


<岡田>
 ああ、確かに。
 これだとアシスタント雇えないから。


<鈴木>
 そうです。


<岡田>
 そうか。
 たった1冊の200ページの本を2万部売ったとしてもそうなんですね。

 この2万部というのも、おそらく2000部ぐらいの本を10巻出してないと到達できない数字ですよね。
 現実的に考えるなら、2万部=2000部の本×10巻だと。
 ページ数にすると2000ページ分になりますね。


<鈴木>
 なにより、2000部っていう数字は……だいたい今の電子書籍の売上って、紙の本の4%ぐらいですから、紙で10万売れる人が電子では大体2000部ぐらい。
 そういう数字です。


<岡田>
 じゃあ、電子書籍のこの流れっていうのは、ある漫画家がデビューしたいと思った時にあまり助けにならないんですね?


<鈴木>
 無理ですね。


<岡田>
 つまり、電子書籍というのは、既に売れた作家が余命を伸ばすのにはすごく有効だけれど――


<小飼>
 2013年の8月現在で、電子書籍で食える人というのは、既に他で食える段階にある人だけです。


<岡田>
 既に食える人。
 でも、電子書籍の市場が10倍ぐらいになってきたら、“そろそろ”っていう話になってくるわけですよね?


<小飼>
 だから、今のところはやっぱり、市場そのものが大きくなってくれることに一番プライオリティーを割いて欲しいと思っています。

「電子出版ノススメ~鈴木みそ☓小飼弾☓岡田斗司夫~」レポート【全4回】
 第1回 鈴木みそ:出版社の言う「どうせ売れない本」がベストセラー
 第2回 電子書籍は食えない作家が落ちる最後の墓場なのか?
 第3回 手塚治虫が飢死するほど多様性を好む日本人」
 第4回 電子書籍で食える人は、既に他で食えてる人だけ


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ライター:佐藤家清



otakingex at 09:36コメント│ この記事をクリップ!

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