印刷

違法ダウンロード防止への取り組み

公明新聞:2012年7月12日(木)付

「著作権」教育の普及を

若い世代に尊重の“芽生え”
CD制作過程など通し意識啓発
レコード会社への職場訪問


著作権教育の一環として、一般社団法人日本レコード協会の加盟各社が行っている、中高生を対象にした職場訪問の取り組みが注目されている。これは、音楽業界の仕組みや音楽CDが完成するまでの流れを知ることで著作権に対する意識を啓発し、違法と知りながら、インターネット上に違法配信された音楽・映像などを私的使用目的で複製する「違法ダウンロード」の防止につなげようという取り組みだ。こうした著作権教育の現状と効果を探った。

中高生を対象に実施されている職場訪問=東京・港区「今、皆さんも将来の仕事を探している途中だと思いますが、こうしたエンターテインメント企業の仕事は、やりがいのある面白い仕事です」。都内にある大手レコード会社「エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社」の本社ビルの一室。千葉県から校外学習に訪れた中学生たちは、広報担当者の言葉に真剣に耳を傾けていた。

これは、同社が中高生を対象に実施している職場訪問のひとこまだ。同社では、普段知り得ない音楽業界の仕組みと魅力を知ってもらうため、所属する有名アーティストのヒット曲とともに同社の歴史を振り返るVTR上映のほか、第一線で奮闘する社員の素顔や仕事の流れを紹介する内容で行っている。

また同社では、スカウトやオーディションなど新人アーティストの発掘方法や、作詞・作曲からCD発売という一つの曲が世に送り出されるまでの工程なども説明。職場訪問専用の部屋を設けるなど、積極的な受け入れ態勢を整えており、ほぼ毎日実施している。

「違法ダウンロードが増えると、新しい作品を作るための資金がなくなり、新しい日本の音楽が生まれにくくなってしまいます」。会社紹介が一通り終わると、講師は著作権法の説明に移り、違法ダウンロードに対する注意を呼び掛けている。職場訪問には、音楽業界の魅力を伝えていくと同時に、著作権教育という重要な側面もあるのだ。

「最近、これまでCDを持ったことがない、買ったことがないという子どもが増えていると感じます」。この日、講師を務めた同社コーポレート広報課の渡辺明日夏さんが指摘するように、インターネットの急速な普及に伴い、音楽と気軽に接する機会が拡大する一方、CD自体を購入したことがない子どもが急増している。そうした中、修学旅行や校外学習の中で、音楽業界関係者と触れ合い、CDなどの制作過程を知り、著作権の知識を得られる職場訪問の持つ意義は大きい。

こうした職場訪問は、これまで各レコード会社が独自に実施してきたが、若い世代への著作権啓発の一環として2009年から、一般社団法人日本レコード協会が窓口となり、一層の充実に取り組んでいる。09年だけでも約500校4900人の生徒を受け入れ、昨年度も東日本大震災の影響はあったものの、約2000人超が参加しており着実に浸透しつつある。

「地道でも一番心に届く」
レコード協会 “歯止め”としての期待強める


音楽に関する違法の実態音楽に関する違法な利用の実態としては、違法複製CDの購入や、インターネット上に違法配信された音楽データ(違法ファイル)などをダウンロードする行為(私的利用を含む)などがある【イラスト(右)参照】。同協会の調査によれば、違法ファイルなどの年間ダウンロード数は43.6億ファイルで、正規ダウンロード数4.4億ファイルの約10倍にも上る【グラフ(下)参照】。被害総額は6683億円に及び、深刻な事態となっている。

同協会としては、これまでも違法ダウンロード防止のための広報活動を展開してきたが、若い世代に直接働き掛ける著作権教育をより重要視し始めている。

法ファイルなどの年間ダウンロード数「1枚のCDが完成するまでには多くの人間が関わり、いろんな思いが込められている。そうしたことを知ってもらうことが、著作権を尊重する“芽生え”につながる。地道だが一番心に届く方法だ」。同協会広報部の米内友伸課長補佐が語るように、参加した生徒たちからは「1枚のCDが貴重に思えた」「正しくダウンロードするよう友達にも呼び掛けていきたい」「著作権の大事さがよく分かった」―などの感想が寄せられており、若い世代に著作権尊重の意識が生じ、違法ダウンロードの“歯止め”効果が生まれつつあるようだ。

同協会としては、修学旅行を企画する旅行代理店へのPRのほか、今年から学校現場への出張授業も開始し、普及教育を一層進める方針だ。同広報部の小峰明子さんは、「まずは協会としてできることに取り組むと同時に、学校現場でも著作権を学ぶ機会が増えてほしい」と期待を述べている。

公明も著作権教育充実を主張

違法ダウンロードの防止策については、公明党としても党文部科学部会(池坊保子部会長=衆院議員)を中心に取り組んできた。6月20日に成立した「改正著作権法」の制定をリードしたほか、著作権教育の推進・拡充も主張しており、今回の改正法では、未成年者への対策を重視し、学校現場などでの充実が付則に盛り込まれた。

公明新聞のお申し込み

公明新聞は、激しく移り変わる社会・政治の動きを的確にとらえ、読者の目線でわかりやすく伝えてまいります。

新聞の定期購読