営業として積み上げてきた実績を、なんとか転職時に活かしたい――。

そんな思いを抱きながらも、なかなか具体的な行動に結びつけられないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこでご紹介したいのが、『営業の転職 成果と納得を手にするキャリア戦略』(梅田翔五 著、日本実業出版社)。

著者は、複数の人材サービスを取り扱うキャリア&リクルーティング事業本部の部長を務める人物。これまで、to C/to B、新規/既存、有形/無形、大手企業所属/スタートアップ所属といった、多様な営業現場とマネジメントを経験してきたそうです。加えて人材紹介の現場では多くの営業パーソンのキャリアと向き合ってきたのだとか。

本書を執筆した理由は、「営業職の転職」に特化し、具体的かつ体系的に解説された書籍が世の中にはないと感じたからだそう。

転職やキャリア選択には職種を問わず普遍的な要素がありますが、実際に行動する際には職種ごとに前提や戦略が大きく異なるものです。たとえば営業職であれば、成果の出し方や評価される観点も他業種とは違って当然。

にもかかわらず営業という仕事に関わる多くの人が、「一般的な転職ノウハウ」や「抽象的なキャリア論」しか得ることができなかったり、あるいはSNSなどにあふれる“誤った情報”に振り回されているというのです。だとすれば、本来の実力を活かしきれずに苦戦したとしても無理はありません。

だからこそ本書では、営業という仕事のリアルを土台にしながら、転職やキャリアの考え方を「具体」にまで落とし込んで解説することにこだわりました(「はじめに」より)

そんな本書のなかから、きょうは第2章「営業の転職は、ここから始める」内の2-01「売り手市場で“求められる営業”になるためには?」に注目してみたいと思います。

営業職は「超売り手市場」

営業職は、ほぼすべての業界にニーズがある、ビジネスの必須職種。しかし人材不足が続く“超売り手市場”でもあります。

たとえば、「doda」が発表をした「転職求人倍率レポート」によれば、営業職の求人倍率はこの6年で1.32倍から3.14倍と2倍以上に跳ね上がっています。これは求職者一人あたり、3件以上の営業求人が存在していることを意味します。(58ページより)

転職求人倍率は、転職希望者1人あたりに何件の求人があるかを示す指標。転職求人倍率が2.0なら、転職希望者1人に対して求人が2件あるということになるわけです。現在の転職市場は売り手(求職者)にとって有利であり、そんな状況を生み出す背景として、著者は以下の3点を挙げています。

① 人手不足の加速:労働人口の減少により、どの業界でも「人が足りない」状況が続いているのはご存知のとおり。営業職も例外ではないわけです。

② 若者の営業職離れ:「ノルマがきつそう」「残業が多そう」「ハラスメントが横行していそう」など、昔よくあったネガティブなイメージの影響で、若年層が営業を避ける傾向があるそう。つまり、それが人手不足を加速させているようです。

③ “人を介した営業”の再評価:ウェブマーケティングやSNS、AIの普及もあって、ただ広告を出したりするだけでは競合との差別化は難しくなっています。そんななか、“顧客の意思決定をあとひと押しできる営業”の価値が再評価されているのだといいます。

ここからもわかるように、営業パーソンのニーズは高まっているのです。ただし企業側の採用基準も変化しているそう。気合いや根性ではなく、戦略的な思考力や言語化力、ITリテラシーなどのスキルが求められるケースが増えているため、売り手市場とはいえ、誰でも簡単に採用されるわけではないのです。(58ページより)

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成長市場に身を置くことが“市場価値”を高める

「どんな営業が求められるのか?」を考えるうえで欠かせないのが、「市場の成長性」を見極められる視点。

一般的に、成長している市場では営業職の求人案件が増える傾向にあります。それにともなって、その市場で培った営業スキルや業界知識の価値も高まります。そのため成長市場で経験を積んだ人材は、他社からも高く評価されやすく、転職やキャリアの選択肢が広がる傾向にあるわけです。

一方、縮小している市場では、営業職の求人案件は減っているようです。縮小市場に身を置いていると、自分の意思に関係なく、将来的に転職や異動の選択肢が限られていく可能性があるのです。つまりキャリアの市場価値は、人材の需給バランスの影響を強く受けるということ。

人材需要 > 人材供給 = 市場価値が上がりやすい

人材需要 < 人材供給 = 市場価値が上がりづらい

(60ページより)

キャリアは、市場価値さえ高ければよいというものではありません。市場価値を追いすぎてしまった結果、自身の価値観や思いをないがしろにしてしまい、幸福度が下がってしまうというケースもよくある話です。

ただし「市場価値が高い」ということは、選択肢が多く、キャリアを柔軟に形成しやすいとも言い換えることができます。したがって、成長市場で通用する営業パーソンを目指すことが「市場価値が上がる」、つまり「求められる営業になる」道につながりやすいということ。(60ページより)

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成長性だけでなく「市場の規模」も確認を

市場を選ぶ際には、「成長性」だけでなく「市場の規模」にも目を向けることが重要。どれだけ成長性があっても、市場が極端に小さい場合には以下のようなリスクがあるからです。

・頭打ちが早く、長期的に見てスケールしにくい

・企業数が限られており、転職先・ポジションの幅が狭い

・一部の企業は急成長するが、淘汰も激しく浮き沈みが大きい

(60ページより)

そのためキャリアを築くうえでは、「成長性×市場規模」のバランスがとれた領域を選ぶのが理想的なのです。(60ページより)


いままさに転職を考えている営業パーソンはもちろん、将来に備えてキャリアを見なおしたい方、さらには営業人材の採用にかかわるマネージャーや採用担当者にも役立つはず。それぞれの立場から、参考にしてみる価値はありそうです。

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著者紹介:印南敦史

作家、書評家、音楽評論家。1962年東京都生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。「ライフハッカー・ジャパン」で書評連載を担当するようになって以降、大量の本をすばやく読む方法を発見。年間700冊以上の読書量を誇る。「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」などのサイトでも書評を執筆するほか、「文春オンライン」「qobuz」などにもエッセイを寄稿。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社、のちにPHP文庫)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)など多数。最新刊は『現代人のための読書入門 本を読むとはどういうことか』(光文社新書)。@innamix/X

Source: 日本実業出版社