気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Arcen Games開発、PC/Mac向けに3月7日にリリースされた近未来SFストラテジーRPG『ハート・オブ・ザ・マシーン』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、崩壊の危機に瀕している近未来世界を舞台に施設の建築や兵器の製造を行い、都市の制圧を目指すストラテジーRPG。プレイヤーはロボットや兵器化された生物、戦闘機械など、様々なユニットを使用してステージの制圧を目指します。日本語にも対応済み。
『ハート・オブ・ザ・マシーン』は、2,980円で配信中。


――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?
クリスこんばんは!あるけんゲームのクリスです。(訳注:この一文は日本語で回答いただいたため、そのまま掲載します)
Chris McElliigott-Parkです。2009年にインディーゲームスタジオ「Arcen Games」を設立しました。最新作である『ハート・オブ・ザ・マシーン』は、私がこれまでに作ってきたゲームの中で初めて日本語ローカライズを行った作品ではあるのですが、実は私はSteam上でかなり初期の頃から活動しているインディー開発者の一人でもあります。
現在はソロのインディー開発者として活動していますが、これまでの数年間、様々なタイトルを6人ほどのチームで開発してきました。また、作曲家のPablo Vegaとは常にタッグを組んでいます。彼とは10作品以上も一緒に作ってきており、深い友情と確固たる協力関係を築き上げてきました。
私の好きなゲームは長い間変わっていません。1位は『ファイナルファンタジーVI』と『クロノ・トリガー』で、この2つは同率首位ですね(どちらか一つを選ぶなんて不可能です)。そして、それに次いで2番目に好きなのが『サイレントヒル2』(リメイクではなくオリジナル版)です。これらの作品は、私に「ゲームは芸術である」ということを教えてくれた最初のゲームであり、私の人生に計り知れないほど大きな影響を与えてくれました。
『FFVI』ではセリスが一番好きなキャラクターです。彼女の物語の中における成長は、当時の他のゲームの主人公たちとは一線を画す、別次元のレベルに達していました。対照的に『クロノ・トリガー』は、ゲーム以外の媒体ではこれほど衝撃的に語ることはできないだろうと思わせる、複雑な物語を提示してくれました。より最近の作品で言えば『十三機兵防衛圏』などが、その「ゲームならではの物語体験」という面をさらに高い次元へと引き上げていますね。
――本作の特徴を教えてください。また、そのアイデアはどのように思いついたのでしょうか?
クリス私の作品の多くは、細部まで深く考察したくなるような「奥深さ」を持っているのが特徴です。これまでのキャリアの大部分において、その「奥深さ」は主に戦略性、そしてプレイヤーにとってふさわしいライバルと思えるようなNPCを作り上げるのに向けられてきました。
しかし、この最新作で最も際立っている要素は、そのストーリーと世界設定です。これは「タイムトラベル」の物語であり、「ロボット」の物語であり、「アイデンティティ」「社会」そして「トランスヒューマニズム(超人間主義)」を巡る物語でもあるのです。
このアイデアは、2015年、私が他のプロジェクトの合間に描き留め始めたのが始まりです。その後、2022年に再びこの構想へと立ち戻り…そして2026年の今、ついに完成を迎えました!
――本作の開発にあたって影響を受けた作品はありますか?
クリスインスピレーションの源をすべて書き出そうとしたら、紙が何枚あっても足りないでしょうね。例えば、『クロノ・トリガー』のタイムトラベル要素や『FFVI』の「世界崩壊後」へのオマージュといった細かな点から、映画「ターミネーター」シリーズ、「ベイマックス」、そして『X-COM』といった、より明確で大きなインスピレーションまで多岐にわたります。また、『ELDEN RING』からは、アイテムの説明文や背景の中に物語を埋め込んでいく手法を学びました。ストーリーの面では、マーサ・ウェルズの「マーダーボット・ダイアリー」が私の書き方そのものに劇的な変化をもたらしており、その影響はこのゲームにもはっきりと現れています。
本作の全体的なシステムにおいて最も刺激を受けたのは、『ファイアーエムブレム 風花雪月』です。この作品には、アドベンチャーパートと管理パート、そして戦略的なストーリーパートが見事に組み合わされています。これらの要素がしっかりと同列に並んでいるのが非常に面白いと感じ、同じような構造を、4Xストラテジーというジャンルで、かつ一つの連続したマップ上で実現したいと考えたのです。最終的には『風花雪月』と随分異なるものになりましたが、インスピレーションは間違いなくそこにあります!

――本作の開発中に一番印象深かったエピソードを一つ教えてください。
クリスゲーム業界に入るずっと前、私は小説家になりたいと思っていました。しかし、その業界でやっていけるほどの才能は自分にはなかったのです。それでも、長年の訓練のおかげで、ゲーム開発における考え方の多くはいまだに「小説家のレンズ」を通したものになっています。
小説家がよく興奮して語ることの一つに、「キャラクターたちが勝手に動き出す」という現象があります。執筆中にキャラクターたちが作者の頭の中で自己主張を始め、物語の断片が作者の予想もしなかった方向へと転がっていく瞬間です。私にこれまでそんなことは滅多に起こらなかったのですが、本作ではそれが何度も起こりました。
私にとってこのゲームの最も胸を打つ瞬間の多くは、私の視点から見ても、完全にどこからともなくやってきたものです。ある敵ロボットがいたのですが、そいつは基本的に「大きくて恐ろしい敵」というだけの存在でした。ゲームプレイの観点からは、アグレッシブではあるものの、やりすぎない程度に振る舞うようデザインされていたのです。私はコードを書き、想定通りに動くのを確認していた時、ふと思いました… 「これは私が望んだ動きだし、その通りにコードも書いた。でも、論理的な筋が通っていない。ゲームプレイとしては理想的だけど、物語としては何の説明もつかない。なぜこいつはこんな風に振る舞っているんだろう?」と。
数時間考え込んだ後、突然「あっ!」と閃きました。そのロボットがなぜそんな行動をとっていたのか、その理由がすべてがカチッと音を立てて繋がったのです。この大きくて恐ろしいロボットは、私が思っていたような奴では全くなかったのです。
これ以上言うとネタバレになるので控えますが、結果として生まれたそのキャラクターは、今ではプレイヤーたちの間で一番人気の一人になっています。ただの名もなき敵役になるはずだった者が、自ら存在を主張し、ファンの心を掴む存在になったこと…これは間違いなく、本作の開発において最も印象深かった出来事です。
――リリース後のユーザーのフィードバックはどのようなものがありましたか?特に印象深いものを教えてください。
クリス2024年初頭に最初のベータ版を出した時、自分でも「シンプルでわかりやすいゲーム」だと思っていました。パブリッシャーも実際にプレイし、同じように「すぐに覚えられるね」と言ってくれていたのです。
ところが、私の過去作のファンや新規の方々を募って週に10人ずつテストプレイしてもらったところ、「信じられないほど複雑で、何をしていいかさっぱり分からない」というフィードバックが返ってきたのです。そこから数ヶ月間、最終的に100人ほどに膨れ上がったテスター陣と協力し、ようやく直感的に遊べる形へと磨き上げました。
しかし、2024年6月のSteam Nextフェスで本作を公開すると、またしても「複雑すぎて理解不能」という声が上がったのです。そこからさらに半年かけて改良を重ね、2025年1月に早期アクセスを開始しました。そこでも同じような指摘はありましたが、以前よりはずっと減っていました。早期アクセスの1年間は、あらゆる粗削りな部分を削ぎ落とすのに本当に役立ちました。
最大の課題は、プレイヤーによって期待値がバラバラなことでした。例えば、『ファイアーエムブレム』の既存プレイヤーなのか、『X-COM』の既存プレイヤーなのか、あるいは『シヴィライゼーション』の既存プレイヤーなのか…といった具合です。今作はそれらのジャンルをこれまでにない形で融合させているため、「これと同じだよ」と言い切れる作品が存在しないのです。それは「強み」でもありましたが、同時に「呪い」でもありました。
2026年3月にバージョン1.0をリリースした頃には、幸いにもそうしたフィードバックは一変しました。複雑さはちょうど良いバランスに収まり、本当にホッとしています。これまでに多くのゲームを作ってきた私でさえ、この体験を「わかりやすいもの」にするのにこれほどの時間がかかるとは、正直驚きでした。
そして、もう一つ強く印象に残っているのは、「本作をプレイした後、何日もの間、本作のストーリーについて考えてしまう」という感想をいただけたことです。小説家を志しながらゲームの道を選んだ私にとって、それは何物にも代えがたい言葉でした。自分の書いた物語が、これほど多くの人々と感情レベルで繋がることができたと感じたのは、今作が初めてかもしれません。それはとてもワクワクする気持ちであると同時に、身の引き締まる思いでした。
――ユーザーからのフィードバックも踏まえて、今後のアップデートの方針について教えてください。
クリス現在、プレイヤーの皆さんから最も多く寄せられている要望は「もっとストーリーを楽しみたい」という声です。すでに90時間分ほどのストーリーがあり、2つのエンディングも用意しているんですけどね。
本作はかなりのボリュームがあり、全難易度を100%コンプリートしようとすれば250時間はかかります。それでも「もっと遊びたい」と言ってもらえているので、今はそこに全力を注いでいます。ここ数年、コンテンツを追加しつつも「わかりやすさ」や「遊びやすさ」の向上に注力してきましたが、今は「まとまった量の新コンテンツ」への明らかな要望がありますので、来年にかけてはそこを重点的に進めていく予定です。
もちろん、細かな修正や調整も継続していますし、Steamワークショップへの対応も進めています。これも多くのリクエストをいただいていました。このゲームはModが可能な設計なので、プレイヤーが自分自身の物語をこの世界で紡いでくれるのを楽しみにしています。
――本作の日本語対応について教えてください。
クリス本作は公式に日本語へ翻訳された私の最初の作品となりますが、翻訳チームの皆さん、そして彼らが投げかけてくれた数多くの質問には本当に感謝しています。
本作には専門的な科学用語や医学用語に加え、独自のSF造語も数多く登場するため、翻訳プロジェクトとしては非常に困難なものだったはずです。彼らの尽力には頭が下がる思いですし、こうして私の作品が初めて日本で、公式な日本語版としてリリースされることを心から嬉しく思っています。
――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?
クリスもちろんです!制限はまったくありませんよ。
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
クリス皆さんが本作を楽しんでいただけることを心から願っています!『ハート・オブ・ザ・マシーン』には、ゲームに限らず、日本の文化から受けた影響がいたるところに色濃く反映されています。この作品は、最初は少しばかりの「忍耐」が必要かもしれませんが、決して「急いで進めなくてはいけない」と感じる必要はありません。皆さん自身のペースで遊んでみてください。そうすることで、この世界を探索するための自由度がどんどん広がっていくという、最高のご褒美が待っていますよ。
ある意味、本作にはヴァニラウェアの『十三機兵防衛圏』に近い感覚があるかもしれません。もしあの作品をまだプレイしていない、あるいは途中で止めてしまったという方がいれば、あちらも間違いなくプレイする価値のある傑作です。壮大なSFのコンセプトというものは、その性質上、世界観が確立されるまでに少し時間がかかるものです。本作も、そして『十三機兵防衛圏』も、先を急ぐのではなく、「アイデアが目の前で紐解かれていく過程」そのものを楽しんでいただければ幸いです。
――ありがとうございました。


◆「注目インディーミニ問答」について
本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に900を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。








