【ペット共生住宅専門家に聞く】猫リフォームのポイントと猫好きさんの事例を紹介

猫と暮らす上で、室内飼いによる運動不足やストレス、脱走やけがの心配、爪とぎやいたずら、トイレのニオイなどの悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか。
愛猫が一日でも長く元気でいてもらうためにも、猫にとって快適な環境を整えたいもの。そんな「猫ファーストの家」にリフォームするポイントをペット共生住宅の専門家、一級建築士事務所 前田敦計画工房の前田敦さんに教えてもらいました。併せてまねしたい猫リフォームの事例も紹介します。

記事の目次

ャットウォークとキャットステップ

猫が喜ぶキャットウォークとキャットステップ、猫窓の事例(画像提供/一級建築士事務所 前田敦計画工房)

注目される「猫のためのリフォーム」。なぜ必要?

SNSにあげた猫のためにリフォームした家の事例写真がバズったり、「#猫リフォーム」「#猫と暮らす家」といったタグが拡散されています。飼い主が自らを「下僕、しもべ、お世話係」などと呼ぶことも「猫のために尽くす」思いの表れでしょう。そんな現状からも、猫の室内飼いが増えて、室内の環境づくりや飼い方と猫の幸せに深く関わっていることが周知されてきた証ではないでしょうか。

窓辺で眠る猫

外の景色を見ながら出窓でゆったりとくつろぐ猫(画像提供/PIXTA)

「猫のためのリフォームをしたい人はかなり増えています。『犬は人につく、猫は家につく』といわれるように、猫は人へというより家への愛着が強く、快適な居場所を何より重視します。また、猫は犬と違って散歩をしないので、食事や睡眠、遊ぶ、くつろぐなど、日常生活の全てを家の中で完結します。だからこそ、一般住宅のままでは猫が遊ぶ場所や快適な居場所、好ましいトイレ環境がないことが多く、どうしてもリフォームが必要になってくるのです」と話すのは、一級建築士の前田敦さん(以下、コメントは前田さん)。

猫の平均寿命は15.92歳、飼育環境別で見ると外に出ない猫は16.34歳、外に出る猫は14.24歳(令和7年(2025年)、「全国犬猫飼育実態調査」ペットフード協会)。室内飼いが普及し、交通事故や迷子、他の動物や鳥などとの接触による感染症、虐待の被害に遭うことが減ったことも、寿命が延びた大きな要因です。環境省も「猫を室内飼育し、猫が退屈しないよう快適な環境を整え、飼い主が十分なコミュニケーションをとること」を推奨しています。

猫も人もうれしい猫リフォーム事例5選

猫との暮らしをより豊かに楽しみたいと工夫した猫リフォームの事例はSNSでも人気です。その中でも、猫好きの筆者が注目した5つの事例を紹介します。

事例1:ひょっこり「おかえりなさい」ができる「通り穴」

7匹の元保護猫と暮らすなみそさんは築約60年の空き家を購入し、建築を熟知する夫が大改修。リビングと玄関を行き来できる通り穴を設けたので、ドアを閉めていても、飼い主の外出時や帰宅時に猫が家の形の穴から顔を出したり出入りして「いってらっしゃい」「おかえりなさい」をしてくれて、家族はほっこり、大満足しています。

通り穴

左がリビングの壁に穴を開けて、右のように玄関の下足入れの上のカウンターに出られるようリフォーム(画像提供/なみそ(@omochi_nam01)さん)

事例2:キャットウォークの途中に透明ボウルのお昼寝スペース

リビングのキャットウォークの途中に隠れ家的なお休み処を設け、透明素材のクリアボウルを設置。猫が縦格子の合間や透明ボウルから家族を見下ろし、カーブに体をゆだねてリラックス。飼い主はクリアボウルを通して愛らしい猫の姿や肉球を眺められる、Win-Winの居場所です。

お昼寝スペース

高い位置に設けた猫の休憩スペース。縦格子があるため家族の気配を感じつつ落ち着いて過ごせる(画像提供/なみそ(@omochi_nam01)さん)

事例3:縁側を猫部屋にして人と猫を分離しながら交流

築103年の古民家を大改修して猫を見ながら過ごせるカフェをオープンした「ネコ部屋【ひげまるカフェの中の人】さん。大広間をぶち抜いた広い客席フロアと、猫たちの日常スペースは透明の板で仕切られています。キャットステップなど遊び場を設けた広い縁側では、猫たちが走り回って遊んだり日向ぼっこなど、自由に過ごしています。

縁側を猫部屋に

回遊する猫を眺めながらお茶や食事ができるカフェ。時には接客上手な猫が客席フロアで接客をすることもある(画像提供/ネコ部屋【ひげまるカフェの中の人】(@nekobeya35))

事例4:窓や玄関に脱走防止対策を

筆者は、飼っていた猫が子猫の頃よく網戸に上って網を破壊されたことがありました。春夏は窓を開けて風を入れたいときもありますが、外への好奇心が強い猫は少しだけ開けたすき間からするりと逃げてしまうケースもあるので脱走対策は必要ですね。「ネコ部屋【ひげまるカフェの中の人】では、掃き出し窓にメッシュパネルを設置して脱走を防止しています。

窓に脱走防止対策

カフェには保護猫を含む猫たちが自由に過ごしているそう。猫たちの脱走防止のための網を設置している(画像提供/ネコ部屋【ひげまるカフェの中の人】(@nekobeya35))

事例5:猫が自由に歩き回れるリビング・ダイニングに

子育てを終えたご夫婦が、セカンドライフと愛猫2匹のために、築38年の中古住宅を購入してフルリフォームを行ったTさん宅。玄関と居室の間に格子戸を設置して、愛猫が外に脱走しないようにしました。格子を通じて映る陰影が美しく、見た目の楽しさもアップしました。

リビングの壁にはキャットウォークを張り巡らせ、キャットウォークから階段につながるようにして、愛猫たちが2階にも移動できるようにしています。ダイニングの一角にもキャットステップを設置。また、猫が吐き戻しをするため、床材はむくではなく床暖房対応の3層フローリングを採用しています。

猫が自由に歩き回れるリビング・ダイニング

リビングにはキャットウォーク、キャットステップを設置したほか、キャットタワーも置いて、猫がのびのび遊べるようにした。壁全面に消臭効果もある珪藻土を採用(Tさん宅、写真提供はOne‘s Life ホーム)

玄関と居室の間には脱走防止の格子戸もつけています。

脱走防止の格子戸

玄関と居室の間の猫の脱走防止の格子戸。収納の下には換気扇をつけて、猫のトイレ置き場に(Tさん宅、写真提供はOne‘s Life ホーム)

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猫リフォームで重要な「爪とぎ対策」と「安全なキャットウォーク」

猫リノベに関心があっても、何から始めたらいいのか分からない、費用が気になる、お金をかけて失敗したくないなどと考えて二の足を踏む人もいるでしょう。「猫と暮らす家の相談で最も多いのは、爪とぎ対策とキャットウォーク・キャットステップの落下事故防止です」と話す前田さんに話を伺いました。

猫が爪をとぎたくなる場所に予め爪とぎ対策を

筆者が以前飼っていた猫が柱の同じ場所でくりかえし爪とぎをして、柱の一部がへこみボロボロになって、退去する際に 困ったことがありました。

オットマンで爪研ぎをする猫

大事な家具で爪とぎをされるのは、可愛い愛猫でも困ってしまうもの。爪とぎをしにくい素材のソファにするなどの対策を(画像提供/PIXTA)

麻縄を巻いた柱

猫は爪が引っかかる麻縄や麻布などを好むので、独立した柱に麻縄を巻いておくと猫は喜んで爪をとぐ(画像提供/一級建築士事務所 前田敦計画工房)

キャットウォーク・キャットステップをつくる注意点

猫は上下運動や、飼い主さんを見下ろせる高い所が好きなので、猫のためのリフォームではキャットウォークやキャットステップをつくる人が多くいます。

落下事故防止のために壁の下地を補強

「キャットウォークやキャットステップの落下事故が相次いでいるという相談は多々あります。現場を見に行くと板が壁の下地にしっかりと固定されていなかったので、猫がジャンプする際に耐えられる強度が保てるよう下地の補強をしました。猫のために最も重要なのは安全性を確保することです」

キャットステップ

壁の下地を補強してキャットステップをしっかり固定(画像提供/一級建築士事務所 前田敦計画工房)

多頭飼いのキャットウォークは2方向の動線を確保

「猫は飼いやすいのもあって、多頭飼いをする人が多いです。国内の猫の飼育頭数は約915万5000頭、飼育世帯は505万8000世帯で、1世帯の飼育頭数は平均1.81頭(2024年全国犬猫飼育調査/ペットフード協会)。多頭飼いの場合、それぞれが自由に動き回れて、衝突しない工夫が必要です。

また、多頭飼いでは、どうしても上下関係が出てきます。キャットウォークやキャットステップで2匹がすれ違う場合、力関係が上の猫が優先になり、下の猫が逃げ場を失って落下して怪我をすることもあります。そうならないように、キャットウォークを二層にして途中に穴を開けて上下に逃げられるとか、必ず2方向の動線、避難場所を確保する必要があります」

キャットウォーク

多頭飼いのキャットウォークは鉢合わせしたときの動線を考えて(画像提供/一級建築士事務所 前田敦計画工房)

前田敦さんに聞いた「猫が喜ぶ場所別のリフォームポイント」は?

昨今、猫に仕事や作業を邪魔されて困っているけど内心はうれしい「ネコハラ(ネコ・ハラスメント)」の様子などがSNSで広まっています。愛猫家にとってネコハラは可愛いですが、猫を入れたくない部屋もあるはず。そこで、前田さんに猫リフォームの場所別ポイントを部聞きました。

猫リフォームのポイント①リビングダイニング

家族のメインステージであるリビングダイニングに設けたいのが、猫の健康とストレス解消に役立つキャットウォークやキャットステップと猫が外を眺める窓です。

キャットウォーク・ステップはサイズに注意

「キャットウォークは15cmくらいの幅が必要で、多頭飼いですれ違うことを考えると30cmくらいあると余裕が持てます。またキャットステップの段差は30cm~35cmくらいに設定すると高齢化してジャンプ力が落ちた猫も登りやすく、長く使えます」

猫にやさしい床材・爪とぎ対策になる壁材

「ペット用の壁紙は爪でのひっかけに強いので爪とぎ対策に有効ですが、普通の壁紙より価格は高くなります。床から約90cmの所に目地棒を1本通して、その下はペット用の壁紙、上は普通の壁紙にすると費用が抑えられます。また、シリカライムという天然無機素材の塗り壁は、クロスの上にも施工できて石のように固くなり爪が立たないため猫は爪とぎをしたくなりません。

床材は、コルク材はボロボロになりますし、ループパイルは爪がひっかかるので避けてください。滑りにくいカーペットが良く、程よいグリップ感、クッション性があり、遮音効果もあるタイルカーペットがおすすめです」

タイルカーペットは施工するタイプもありますが、置き敷きタイプなら吐き戻しをしたときや汚れたときもパーツだけ取り換えられて便利です。

ブラドールレトリバー伏せのポーズ

猫や犬の爪や肉球にやさしいタイルカーペットの使用例(画像提供/PIXTA)

猫リフォームのポイント②玄関・窓

ドアを勝手に開ける賢い猫に感心してはいられません。入ってほしくない場所に出入りしたり、ドアを開けて脱走することは防ぎたいですね。

レバーハンドルや網戸に注意

「猫はドアを閉めていてもレバーハンドルに飛びついて開けたり、引き戸を開けることがあります。猫を入れたくない部屋のドアは、レバーハンドルを“握り棒タイプ”など開けにくいものに変更しましょう。冷暖房効率やプライバシー確保のために常にドアを閉めている場合は、ペットドア付きのドアに変更したり、ドアにペットドアを施工することもできます。

また、掃き出し窓の網戸は猫がよじ登ってボロボロにしたり、転落することがあるので、ひっかいても破れないペット用の網戸に変更するといいでしょう。また、二重サッシにすると、脱走防止になる上、断熱性、遮音性が向上するのでおすすめです」

ペット専用ドアを通り抜ける猫

猫が自由に出入りできるペットドア(画像提供/PIXTA)

猫は外を眺められる窓や出窓が大好き

「猫は窓から外の景色を眺めるのが好きですが、実は猫は縄張り意識が強く外を眺めて縄張りをチェックしているんです。出窓も猫の好きな居場所ですから、出窓の壁側にカーテンをつけてあげると猫は落ち着いて過ごせます。

猫は快適な場所を見つける天才で、陽当たりの良い窓辺やキャットウォークの途中の窓際など、自然と自分のお気に入りの居場所を見つけるので、キャットウォークやキャットステップの途中に窓や隠れる場所、休憩できる場所などを設けて長めのルートにするといいでしょう」

猫は外を眺められる窓や出窓が大好き

左の長いスロープは愛犬の生活動線として設置。その手すり壁の上が愛猫のお気に入りの居場所になったのは飼い主と自然と目線を合わせられるから(写真撮影/一級建築士事務所 前田敦計画工房)

猫リフォームのポイント③キッチン

オープンキッチンは猫が自由に出入りしますが、衛生上の問題やいたずら、刃物や火を使う場所だけに思わぬ事故も心配です。

キッチンは独立型がおすすめ

「キッチンの前にペットゲートを設けても猫は軽々と飛び越えるので、ドアなどで仕切ってクローズド空間にするのが一番です。ただし、リビングダイニングとキッチンの間にガラス窓などを設けて猫が疎外感を感じないよう工夫しましょう。

またIHクッキングヒーターは火を使いませんが、鍋物や煮込み料理などでガラス面が熱くなった状態で猫が跳び乗って肉球をやけどすることがあるので、独立型キッチンがおすすめです」

パントリーもいたずら防止対策を

外出から帰ると、猫がキャットフードの大袋を嚙みちぎって中身が散乱していた、などということも「猫飼いあるある」ではないでしょうか。

「オープンキッチンを採用したい場合は、ゴミ箱やパントリーを猫が勝手に開けないよう注意してください。パントリーの扉は折り戸にすると猫は開けにくく、イカやエビ、ネギ類など猫が食べてはいけないものを食べたり、キャットフードの盗み食いを防げます」

猫リフォームのポイント④トイレと水飲み場

「猫は人目を避けられる場所で排尿や排便をすることが多いです。例えば階段の下など奥まった所にトイレを置いて、周りを囲って換気扇をつけてあげると、落ち着いて用を足してくれます。

例えばクローゼットなど収納の下の高さ50cmに空間を設け、そこにペットのトイレを置いて、上には猫砂や猫用のトイレ用品を収納しておくと便利です。

またトイレの数は頭数プラス1個が基本で、2頭ならトイレは3つ必要です。きれい好きな猫はトイレが汚れていると排尿・排便を我慢することがあります。猫の多くは腎臓が弱く、オシッコの回数が極端に少ないと泌尿器系の病気が疑われるので、毎日トイレや周囲を掃除して用を足しているか確認しながら、清潔さを保ってあげるといいですね。

猫トイレ

階段の下に設けた猫のトイレ。自動点灯する人(猫)感センサー付きライトや換気扇を設置(画像提供/一級建築士事務所 前田敦計画工房)

また、毎日オシッコが出るように、猫の生活動線のどこかに水飲み場を2カくらい位用意して、水分補給が十分にできているかどうかも見てあげてください」

賃貸でもできる猫リフォームは?

賃貸物件で猫と快適に暮らすためのアイデアを前田さんに教えてもらいました。
「キャットウォークやキャットステップがあると猫はうれしいですが、賃貸の場合、もともとの図面がないと壁の下地がどうなっているか分かりません。そこで構造体に取り付けるタイプではなく、構造がしっかりした造作家具を階段状に配置したりしてキャットウォークやキャットステップの代わりにすることもできます。そこにペットトイレやペット用の収納を設けるのもいいでしょう。

床は土足対応のタイルカーペットだと水に強く、傷に強く、滑りにくいのでが便利です。部屋のに合わせてカットすることができるし、防音効果もあり階下への音漏れも軽減されます。壁材は大家さんに話して許可が取れるならペット用の壁紙に張り替えることもできますが、ペット共生物件では入居前にクロスを張り替えていたり、ペット床材を採用していることが多いです」

賃貸の場合は、いたずらされたくないものや危険なものは片づけておくこと、適切な場所に爪とぎ器を置くことも有効です。

猫リフォームの料金相場。気になる予算は?

猫のためのリフォームを検討するときに、やはり気になるのは料金ですね。

「2025年の4月以降、ガソリン代の値上げに加えて住設機器もどんどん値上げされ3カ月後に見積もりを作成すると料金がグンと上がり驚く状態が続いていて相場の変動が激しいです。例えば約70㎡のマンションで水回りも含めて部屋を全面リフォームする場合は約3000万円、坪150万円くらいが目安ですが、リフォームを行う場所や範囲、使う素材にもよって幅があり、ひと口には言えません。

ご自分の予算を伝えて、予算内でどこまでできるかをプロに相談してみるといいでしょう。一挙に全部やらなくても、まずは一番困っている問題だけを解決して、余裕ができたら別なことというふうに段階的に進めてコストコントロールできるのも、リフォームならではのメリットです」

猫の幸せそうな姿が飼い主にとっての幸せであるように、猫のストレスは飼い主にとってのストレスになりがちです。猫のためのリフォームをする際は、猫にとってストレスフリーで安全な設計にすると同時に、飼い主にとってもメンテナンスやお世話がしやすく、心配がいらない家をつくることが大切です。それでも、猫のためにと思って購入した猫グッズに見向きもしなかったり、猫の気持ちは猫じゃないと分からないのかもしれません。

「猫のためにリフォームをする場合は、猫の生態、猫と飼い主さんの関係、飼い主さんの生活スタイル、そして入ってほしくない部屋はどこかを考えて、猫との生活イメージを考えてから、建築士や建築会社に相談するといいでしょう」と話す前田さんのアドバイスやアイデアを踏まえて、猫も飼い主も共に幸せに過ごせるリフォームを検討してみてはいかがでしょうか。

取材・文/佐藤由紀子
写真提供/なみそ(@omochi_nam01)

取材協力/前田敦さん
一級建築士事務所・前田敦計画工房合同会社代表。ペットラバー建築家として、ペットと快適に暮らせる家の設計・監理に積極的に取り組み、実績豊富、雑誌・テレビなどメディアでも多数紹介されている。