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「確認お願いします」は乱暴な仕事の押しつけ

251215追記:先週もっともスキされた記事の1つになったとのことで、、皆さまありがとうございます!

チャットツールが点滅する。
メールの受信通知がポップアップする。
そこに書かれているのは、資料の添付ファイルと、たった一行の文言。

「確認お願いします」

その瞬間、肺の奥から重たい空気が漏れ出る。
ため息だ。
そして脳裏をよぎるのは、諦めにも似た、どす黒い感情。
「ああ、この人の仕事レベルってこの程度なんだな」

汚い言葉で申し訳ありません。
でも、正直に言いましょう。皆さんも思ったことがあるはずです。
なぜ、私たちはこの「確認お願いします」という、一見すると丁寧なはずの七文字に、これほどまでに神経を逆なでされるのか。

それは、その一言が「思考の放棄」であり、「責任のなすりつけ」であり、他人の時間をタダだと思っている「想像力の欠如」の表れだからです。

今日は、この日本中のオフィスに蔓延する「確認お願いします」という病と、そこから身を守るための処方箋について、少しばかり長い話をさせてください。

「確認」という言葉が、あまりにも仕事を含みすぎている

そもそも、「確認」とは何なのか。
広辞苑を引くまでもなく、状況によってその意味は無限に分岐します。

  • 誤字脱字がないか、一言一句を見るのか?

  • 論理構成が破綻していないか、筋道を見るのか?

  • 法的リスクがないか、コンプライアンスの視点で見るのか?

  • デザインの色味が規定通りかを見るのか?

  • 単に「ファイルが開けるか」を見るのか?

送り手は、この無限の可能性の中から、自分の意図を絞り込んで伝えなければなりません。
それをせずに「確認お願いします」とだけ投げる行為。
これは、レストランでシェフが客に向かって、メニューも渡さずに「注文お願いします」と言っているようなものです。

「何を作ればいいんですか? 和食? 洋食?」
客(受け手)は困惑します。
しかし、送り手は平気な顔でこう言うのです。
「いや、とりあえず全部いい感じにお願いします」

知らんがな。
そう叫びたくなるのも無理はありません。

観点(どこを見るか)も、範囲(どこまで見るか)も明示されていない。
これはつまり、「私が本来やるべき要件定義という仕事をサボりましたので、あなたが代わりにそのコストを負担してください」という宣言に他ならないのです。

「とりあえず送る」という責任回避のズルさ

さらにタチが悪いのが、この言葉に透けて見える「責任逃れ」の心理です。

仕事の完成度が低い自覚はある。
でも、自分でこれ以上考えるのは面倒だ。
あるいは自信がない。
だから、とりあえず「確認お願いします」と言って上司や先輩に投げておく。

そうすればどうなるか?
もし後でミスが発覚しても、「いや、あの時"確認お願いします"って送って、何も言われなかったんで大丈夫かと思いました」という言い訳が立つわけです。

これを僕は「責任の共同化(あるいは全嫁)」と呼んでいます。
未完成のボールを相手のコートに放り込むことで、何かあった時の爆心地を自分以外の場所にずらそうとする。その浅ましい生存本能が、あの一行には凝縮されている。

だからこそ、私たちは直感的に不快感を覚えるのです。
「ああ、こいつは仕事を前に進めたいんじゃない。自分の身を守りたいだけなんだ」と見抜いてしまうから。

優秀な人の依頼は、脳のメモリを食わない

一方で、仕事ができる人、いわゆる「優秀な人」の依頼は全く異なります。 彼らは、受け手の脳内メモリを1バイトたりとも無駄遣いさせません。

彼らから送られてくる依頼は、こうです。

企画書の草案を作成しました。
全体的な方向性が部長の方針とズレていないか、「目次と要約」だけを見ていただけますか?
細かい文章や数字はまだ精査していないので、無視してください

これを受け取った時、私たちはどう思うでしょうか。
「なるほど、方向性だけでいいのね。じゃあ3分で終わるな」
そう思い、すぐに目を通し、「OK、方向性は合ってる。進めて」と返すことができます。

この差はなんでしょうか。
それは、「相手にどう動いてほしいか」まで設計できているかどうかの違いです。

仕事ができる人は、相手の時間が有限であることを知っています。
だから、相手が「何をすればいいか」を迷う時間を極限までゼロにしようと努力します。
一方で、仕事ができない人は、相手の時間を「使い放題のサブスクリプション」か何かだと勘違いしている。

厳しい言い方をすれば、相手への依頼の仕方一つで、その人の仕事人としてのレベルが露骨に見えてしまうのです。


では、どうすればこの「確認お願いします病」から脱却できるのか。 あるいは、部下や同僚にどう教えればいいのか。

必要なのは、たった3つの要素です。

  1. 何のための資料か

  2. いま、どういう状態か

  3. どこを見てほしいか(+どこは見なくてよいか)

①何のための資料か

まず、その資料が何のためのものか。

  • 社内の検討用なのか、

  • 上司への説明用なのか、

  • 社外に出すものなのか。

これを示してもらえると、どれくらいの優先度で資料を見ればよいか、どんな視点(顧客の立場、上司の立場とか)で確認すればよいかがわかります。

②いま、どういう状態か

次は、その成果物がどの段階にあるのかを伝えます。

  • まだ書きなぐっただけのメモです

  • 7割方できあがった下書きです

  • 提出直前の最終決定版です

これがあるだけで、受け手は「どのくらいの真剣度で読めばいいか」のギアを調整できます。

③どこを見てほしいか(+どこは見なくてよいか)

ここが一番重要です。
見るべきポイントを絞りましょう。

  • 誤字脱字だけ見てください

  • スケジュールの現実性について意見をください

  • 前回指摘された箇所が直っているか確認してください

  • 逆に、ここは見なくていいです

この三つを組み合わせるだけで、
「確認お願いします」という思考停止ワードが、
ちゃんとした依頼に変換されます。


「確認お願いします」が嫌われるのは、言葉が雑だからではありません。
仕事の中身を、相手に丸投げしているからです。

確認をお願いするなら、
何のための資料か。
どこを見てほしいか。
今回は見なくていいものは何か。

この三点を言葉にする。
それだけで、仕事の空気は驚くほど変わります。

確認とは、作業ではなく、思考の受け渡しです。
その自覚があるかどうかで、仕事の評価ははっきり分かれます。

次に「確認お願いします」と言いそうになったら、一度立ち止まって考えてみてください。
自分は今、何を人に委ねようとしているのか。

そこを言葉にできたとき、もうその一言は、自然と口から消えているはずです。


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