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なぜ欧米の大学は「女子枠」を作らないのか?

ゆっくりしていってね!

2022年に文部科学省が掲げた方針をうけて、日本の大学が続々と女子枠を新設・増設しているわね。どうやらアファーマティブ・アクションの一環のつもりらしいわ。

さて。横文字で「アファーマティブ・アクション!」というと、欧米追従の施策のように感じるかもしれないわ。実際、欧米を引き合いにしながら女子枠を正当化している人もよく見かけるし。


でも、女子枠に関して「欧米追従」は誤解よ。全く関係ないわ。

というのも、アメリカやヨーロッパ諸国では、性別に基づいて固定的かつ自動的な合格枠を用意する行為は、明白な差別と考えられているのよ。それは機会の平等を損ない、個人の能力評価を蔑ろにするものだと。よって、およそ違法とされているの。

まあ「およそ違法とされている」なんてちょっと歯切れが悪い表現だけどね。……でもコレ、仕方ないのよ。

欧米諸国は大学入試制度において、日本と同形式の「女子枠」は採用したことがなく、当然、いちいち裁判で是非を争ったこともないから。

裁判に至る前に止まってるっちゅうか、直近の2024年にもオランダのデルフト工科大学が女子枠を作ろうとはしたんだけど、教育検査局が計画段階で「あかん!」と制止しているわ。

デルフト工科大学が、航空宇宙工学の訓練コースの定員の30%を女性に割り当てることで、より包括的なコースにしようという試験的な計画は、教育検査局によって違法であるとして却下された。
検査官は、報道機関ANPに対し、平等の必要性は理解するが、現状の法律では性別による優遇は認められないと述べた。

It IS rocket science: no aerospace equality scheme at TU Delft, DutchNews


「欧米諸国はアファーマティブ・アクション自体には取り組んでいるくせに、なぜ日本と同じ女子枠はやったこともないのか?」という点は逆に疑問よね? そこを説明していきましょう!

アメリカの場合

まず、アメリカの話からしましょう。女子大はちょっと特別だけど、それ以外の共学大学で「入学定員のうち〇人は女子」みたいなクオータ制が採用されたことはないわ。もちろん、単に「将来的にN%は女子となるように取り組みたい」という目標を設定をすることなら積極的に行われているけどね。

というのも、固定的な女子枠は、憲法修正第14条1972年教育改正法第9編(Title IX)に違反すると考えられているからよ。

たとえば、性別ではなく人種クオータ制に関するものだけど、Bakke裁判(1978年)では「そこまで硬直的な人数割り当ては憲法違反である」と判断されたわ。

だから、人種でダメなら性別でもたぶん無理、あえて訴訟リスクを冒して「女子枠」を作る意味はない、というのがアメリカの基本的な考え方になっているのよ。

代わりにアメリカがアファーマティブ・アクションとして実行しているのは、女性向けのアウトリーチ活動(広告・宣伝)やメンターシップの強化、理系教育プログラムの提供、奨学金による支援などよ。

ただし、SFFA裁判(2023年)以降、アメリカでは「属性に基づく優遇措置」にはさらに厳しくなっているわ。(SFFA裁判では、クオータ制という硬直的な方法ではなくても、大学入試において人種を考慮すること自体が違憲であると判断された。)

実際、今まで許容されていたアファーマティブ・アクションである女性限定の教育プログラムや奨学金のいくつかが廃止されたのよ。

参照:
・Are Identity-Based Scholarships Illegal? (Law and Liberty)
・Complaints allege N.Y. college programs discriminate against men, white people (Times Union)
・日米の近況から再考する「女子枠」(ゆきと氏, note)

こうした状況から、アメリカで日本みたいな「女子枠」がOKになる可能性は、ほとんどないと考えていいでしょう。


ヨーロッパの場合

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