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日本全体で子どもの数が減り続けている中で唯一キープしているのは「どこの家の子」か?

独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
写真:アフロ

子どもの数は所得に比例

基本的に、所得と子の数は比例する。「貧乏子沢山」などは昔話に過ぎず、所得が多ければ多いほど子の数は多くなる。

とはいえ、所得の絶対額が増えたからといってそのまま子の数が増えるというものでもない。あくまで所得の相対的な比較間において、そうなるという話である。

それは、過去記事でも紹介したが、所得階級別の子どもの数を見ても明らかである。

全体的に子供の数そのものが減少しているが、その中でも所得階級上位20-40%の子どもの数の減り幅は少ない。

参照→所得階級別子どもの数の推移に見る「少子化対策が少子化を促進する皮肉」

企業規模別子ども数比較

所得というものは、一般的に大企業勤務の方が中小企業勤務より高いと言われる。もちろん、個別の企業で例外もあるが、大体においてはそういう傾向である。

では、企業規模別に子どもの数の推移を家計調査の勤労二人以上世帯の統計から、「世帯あたり18歳未満人員数」を活用して推計してみたい。18歳未満は国の基幹統計上「児童」と定義されている。ただし、家計調査上は同居している児童数であり、出生した子どもの数ではないことに留意していただきたい。

結果は以下である。

10人未満から1000人以上へと規模が大きくなるにしたがって、子どもの数は多くなっていることがわかる。

気になるのは、大企業でさえも近年子供の数は低下していることだ。反面、官公庁は90年代から見れば減少しているが、その減少率はもっとも低く、直近数年を見ても1.0人以上をほぼキープしている。

この二人以上世帯の数というのは基本的に大部分は婚姻した夫婦の世帯主数であり、世帯数を見れば規模別の婚姻夫婦数も類推できる。

尚、家計調査における「官公庁」分類が具体的にどこまでを含むのかは不明だが、割合的には国家公務員・地方公務員に加えて、公社・公団職員も含むものと思われる。

90年代から2021年まで長らく「10-100人未満」の小企業勤務の世帯主が多かったが、2022年以降は、「100-1000人未満」の中堅企業、「1000人以上」の大企業、官公庁などとほぼ同率になった。圧倒的に世帯数が少ないのは「10人未満」の極小企業であるが、これはそもそも母数も少ない。

逆にいえば、「10-100人未満」の小企業勤務の若者が結婚できなくなっているがゆえの少子化であるとも考えられる。ちなみに、企業規模は未婚率にも大きく影響する。

参照→働く企業の規模の大小が「結婚できるかどうか」を大きく左右する「企業規模別未婚率」

「どこの家の子」が多い?

さらに、世帯数に対して世帯当たりの子ども数をかけ合わせれば、企業規模別の子どもの数が計算できる(あくまで家計調査の割合を基にしたもの)。

その規模別割合推移が以下である。

2017年あたりを機に、「10-100人未満」「100-1000人」「1000人以上」の企業より官公庁の子ども数が上回った。2024年時点でも、官公庁が1位である。つまり、今の子どもたちで一番多いのは「官公庁の家の子」なのである。

しかも、官公庁の子どもの数は減ってはいるものの、他と比べればその減り幅は小さく、安定している。やはり、給料や離職の心配がないからこその安定なのだろう。大事なのは、今この瞬間の所得ではなく、今後も継続して安定した生涯収入が得られるという安心感である。特に、地方においては、官公庁に勤めることが一番人気が高いとも言われている。

しかし、一番多い子どもが「官公庁の家の子」になってしまっていることこそが少子化の原因でもあるだろう。

何も官公庁の人間が悪いわけではないし、彼らの結婚や子どもの数を減らしたところで何も解決はしない。

が、2007年に少子化担当大臣ポストができ、2010年に旧民主党による子ども手当ができ、2023年1月に前岸田首相が「異次元の少子化対策」なるものを掲げ、4月にこども家庭庁が発足したが、この推移だけを見ると官公庁以外はことごとく子どもの数が減っており、唯一官公庁だけがキープしているように見える。

穿った味方をすれば、今までの少子化対策とは公務員による公務員のための施策だったのかと思いたくなる。もしそうであれば、成果をあげていると言えるだろう。

参照→「子育て予算を増やしたからといって出生率はあがらない」日本だけではなく世界各国みな同じ

経済的安定と安心があれば?

いずれにしても、子どもの数の減少はすべて婚姻数の減少で説明できるわけで、その婚姻数の減少もほぼすべて所得中間層の婚姻減で説明できる。つまり、子どもの数をこれ以上減らさないためには、所得中間層の若者が安心して結婚できる環境が必要なのである。

公務員の人たちの結婚も出生数も減っていないのは、そうした経済的安心の賜物でもあろう。

賃上げのニュースも話題になっているが、果たして大企業以外の若者にどこまで波及するのかは疑問である。

自分の周りが景気よいと、全体も景気がいいと錯覚しがちだが、そもそもニュースを伝える新聞、テレビ局もまた大企業側である。テレビに出演するコメンテーターもまた本人は一般から見れば高所得層である。報道や言動にバイアスがないとは言えない。正直、日常生活レベルで「金に困った」経験などないだろう。

また、皆婚時代に「貧乏でもなんとか夫婦で頑張った」という今や高齢世代の人たちがいることも否定しないが、だからといって「金がないから結婚できないなんてことはない」と簡単に言わないでほしい。

今の若者は、30年前とたいして手取りが増えているわけでもないのに、結婚や子を持つ金銭的ハードルだけがあがっている状態なのである。

「お金」だけが婚姻減・出生減を食い止める方法とまでは言わないが、中間層の「お金」の問題を実感しないと、少子化対策などすべて的外れとなるし、今までの少子化対策が見事にすべて的を外してきた事実をいい加減直視されたい

官公庁の子ども数が減っていないのであれば、民間の中間層の若者にもそうした経済的な安定と安心を与えることこそが少子化対策なのではないだろうか。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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