NetAppは1月29日にプライベートイベント「INSIGHT XTRA TOKYO」を開催した。同イベントに合わせて来日した、米NetAppの最高経営責任者(CEO)George Kurian(ジョージ・クリアン)氏は、基調講演に先立ってプレス向けのラウンドテーブルを実施、同社の現状について語った。
NetApp CEOのGeorge Kurian氏(右)とネットアップ 代表執行役員社長の斉藤千春氏
同氏は、NetAppについて「データストレージおよびデータマネジメントの分野で長年にわたって自社の事業を変革し続けてきた企業だ」と紹介した。具体的な変革の例として「製品ポートフォリオをオールフラッシュストレージのような高収益領域にシフトした」「主要なクラウドプロバイダと協業してクラウドソリューションの開発に取り組んだ」「サイバープロテクションやサイバーレジリエンスに対する取り組みの強化」「AIなどの先進的なアプリケーションからデータを使いやすくするための取り組み強化」などを挙げた。
同氏は同社の業績が好調であることも併せて紹介し、フラッシュストレージ市場でグローバルでナンバーワンであることに加え、日本国内のオールフラッシュストレージ市場でもナンバーワンを獲得し、さらに国内クラウドストレージ市場でも成長率が年率30%台となっているという。
サイバープロテクションの分野では、自律型ランサムウェア対策(ARP:Autonomous Ransomware Protection)や耐量子暗号などが高評価を得ているとした。同氏は、こうした好業績は「顧客企業が信頼できるデータプラットフォームを構築/活用できるよう支援していくための長期的なイノベーションに対するコミットメント」によって支えられていると強調した。
同社は1992年の創業で、当時はネットワークアタッチドストレージ(NAS)の代表企業であり、エンタープライズ市場で主力だったストレージエリアネットワーク(SAN)との間で巻き起こった「NASかSANか」という激しい議論の一方の主役だった。ご存じの通り、この議論はどちらも勝者とはならず、NASはファイルストレージとして、SANはブロックストレージとして現在も適材適所で使い分けられているわけだが、Kurian氏はこうした流れを踏まえて「NetAppは顧客企業がデータを統合し、そのデータを活用してビジネスをよりよくしていくことを支援してきた。われわれの最初のイノベーションとなったのは様々なシステムのさまざまなデータタイプのデータを統合することで、『Unified Data Storage』を開発した」と語った。
現在はファイルアクセスもブロックアクセスもどちらもサポートできるUnified Storage(統合ストレージ)が一般的となっているが、もともとはNASかSANという議論を経て市場に投入された解決策だったのである。さらに同社では、オンプレミスのデータとクラウドのデータを統合するハイブリッドクラウドデータファブリックを経て、現在は自社をデータインフラストラクチャーの企業だと規定するまでに至っている。
現在はAIアプリケーションによるデータ活用を支援する製品/サービスに注力しており、エンドツーエンドのストレージ統合AIデータサービスである「AI Data Engine」や、AIワークロードに特化して設計された初のエンタープライズクラスのソリューションだという「NetApp AFX」など、AIの急速な発展に歩調を合わせたイノベーションを継続している状況だ。
AIの急速な進化という技術トレンドの大きな変遷に加え、現在では地政学的な緊張の高まりや技術革新に関するリーダーシップ争いなど、これまでにも増して変化が激しく先が読みにくい時代となってきた。そこでKurian氏に「NetAppのCEOとして今何が一番大事だと考えているか」と尋ねたところ、同氏は「われわれは、破壊的な変化(disruptions)をどうやって好機(opportunity)に変えられるかということを常に考え続けている」と答えた。
具体的な取り組みの例としては、「地政学的な緊張の高まりを受けて当社は強靱(きょうじん)なサプライチェーンを再構築し、さらにシステムデザインをコンポーザブルなアーキテクチャーに基づくものとして必要に応じて代替可能にしている」という。
さらに同氏は、「AIのような技術的にもビジネス的にも破壊的なインパクトをもたらす変化が起こった際には、3段階の取り組みを行っている。まず最初は、その破壊的な変化がわれわれの顧客および自身のビジネスに影響を及ぼすものであるかどうかを精査することだ。次に、影響ありと判断された場合には社内のチームに対して『使ってみて試し、学ぶよう』促す。NetAppでは約1年前に約140種類のAIプロジェクトを立ち上げたが、これもそうした姿勢の現れだ。社内で経験を積むことで顧客に対して的確なアドバイスができるようになり、顧客が直面するであろう課題や困難をわれわれ自身が身をもって知ることができる。こうして得られた経験や知見を踏まえ、現在われわれは顧客企業に対して『AIを活用するためには、まずデータを整理してAIに備える必要がある』と提言できるようになっている」とした。
NetAppはもともと高速なファイルシステムを開発し、それに基づいてそれまでは汎用(はんよう)OSで実現する基本的なサービスの1つとして提供されていたファイルサーバの機能を、専用OS、専用ファイルシステム、専用のハードウェアアプライアンスの組み合わせで、NASとして実現することで急成長した企業だ。
その後、エンタープライズ市場で利用を拡大するためにSANとの統合を進め、さらにクラウド環境との統合にも取り組んできた。特定の技術やアーキテクチャーに固執することなく、柔軟に自身を変革してきた一方で、データを使いやすい形で統合的に扱えるインフラを整備するという点に一貫して取り組んできた結果、AI時代の到来を迎えて、これまで以上に統合されたデータの重要性が高まるのとタイミングを合わせる形でさまざまなソリューションを展開できている。
国内でも事業は好調だといい、AI時代を支えるデータインフラとしてその存在感がさらに高まっていくことが期待される。

