企業もクリエイターも、自らを成長させるために最良のパートナーを探している。日々めまぐるしく変化するネット業界において、企業が優秀な技術者を惹きつけるには、またクリエイターが自らのスキルを活かして活躍できる企業と出会うにはどうすれば良いのか。
本連載では、企業のクリエイター採用担当者と、そこで活躍するエンジニアやウェブデザイナーといったウェブクリエイターに話を聞くことで、双方に求められることとは何なのかを探っていく。
第1回はクックパッドで人事部 副部長 エンジニア統括マネージャを務める井原正博氏と、サービスデザイン部 デザイン・UIグループの池田拓司氏。ここ2年間で社内クリエイターを4倍以上に補強したマネージャと、クックパッドUIデザイン開発環境の再構築という大役を任せられたクリエイターだ。

クックパッドは現在、45名ほどのクリエイターを社内に抱えている。ここでいうクリエイターとはウェブデザイナー・プログラマー職のことを指す。井原氏が入社した約2年前はまだ10名程度だった。わずか2年で約35名を採用し、その数は4倍以上に急増していることになる。
クリエイターの比率としては、デザイナーよりもプログラマーが多い。デザイナーも、単純に絵だけを描くという人は少なく、絵も描けるし、HTML・CSSも使うことができる。同社ではそういった、幅広く、バランスの取れたスキルセットを備えたクリエイターを採用してきたという。
池田氏も、ウェブデザイナーとしてキャリアをスタートさせたが、前職でウェブサービス開発に携わるうちに、徐々にプログラミングのスキルも身につけていった。その後クックパッドに入社したが、当時は各チームのサービス開発におけるデザインの役割分担や責任の範囲が不明確だったりと、環境が整備されていなかったという。

そこで入社まもない池田氏が任されたのは、クックパッドのUIデザイン開発環境の再構築だった。クックパッドのユーザーから見える部分に影響を与えずに、社内クリエイターが利用している開発プラットフォーム、フレームワークにてこ入れし、無駄なコーディングを削減し、コード表記を統一させていった。
池田氏の働きによって、他の社員の無駄な業務がなくなり、いい意味で考えずに開発できるようになった。「自分が担当している仕事にコミットするだけでなく、他の人の仕事に影響をおよぼすようなレバレッジが効く仕事は価値が高いですよね。また新しい開発環境を構築するだけではなく、それが社内のクリエイター全員にインストールされて適用されるところにまで持っていく実行力がある」と、井原氏も評価する。
「現場のクリエイターが主体的に提案し、開発していけるボトムアップ型の仕組みを導入できるように環境を整えました。クックパッドはPC向けのウェブサイトだけではありません。スマートフォンウェブ、ネイティブアプリなど、多岐にわたるプラットフォームで足取りをそろえていけます。いまやっとスタート地点に立ったという感じです」と池田氏は語る。
一方で、「クリエイターの向こうにはユーザーがいる。クックパッドとしてサービス品質を上げるために必要なことでした」とユーザー視点を忘れていない。
UIデザイン開発環境の整備という大役が中途で入ってきたばかりの社員に任されるクックパッド。クリエイターに求められるスキルレベルは相当高いように思われる。
井原氏は「ひと言でいうなら、CTOのような人を求めています。1人でクックパッドを作って、1人で運用できるような人。1500万UUぐらいのサービスを最悪1人になったとしても運用できるということです」と指摘する。それだけのパフォーマンスを担うためには、一通りのウェブ開発の定石をインプットし、自らも手を動かせなければならない。

井原氏は、自分よりもクリエイターとしてレベルの高い人を採用するようにしているという。「新しく入ってくるクリエイターはみなさんプロ。だから僕が指示する仕事は、彼らからするとレベルが低いことだと思っています。池田さんの場合は『もうおまかせします』という気分でした。サービス自体や開発スタイルの方向性から決めてほしいです」(井原氏)。
池田氏は「やったほうがいいと思ったことは、積極的に提案している。そして『やってください』『はい、やります』と進めています。いい意味で任されていることを実感しています。このまま自分は受け身ではよくないと思っていたので、やりたいことを受け入れてくれる会社に対して責任とモチベーションを持ってやれています」と表情は明るい。「まあ放置と言えば放置ですが(笑)」と井原氏は語るが、それも社内のクリエイターをプロとして尊敬しているからだろう。
しかし、池田氏のように優秀なクリエイターは決して多くはないはずだ。なにしろクックパッドのUIデザイン開発環境の整備を1人で任されているのだから。「CTOのような人という意味で素養があるというのが基準ですが、正直なかなかいません。本当はそのようなひとを育てていくような人材輩出会社になっていきたいのですが、これまではそこまで手が回っていませんでした」と、その苦労を語る。
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