【オートレース】昨年最愛の父を失った伊藤正真「オヤジの想いは、自分とヤッシーさん(松本康)でつないでいきます!ショージイズムで戦っていきます!」~伊勢崎・G1シルクカップ
◆G1第49回シルクカップ(前検日・7日、伊勢崎オートレース場)
昨年末のオートレース界は、悲しい惜別が続いた。
先月9日には池田政和さんが病に伏し、52歳の短い人生を閉じ、天国へと旅だってしまった。SG8勝を達成した歴史的レーサーの訃報は、多くのファンや選手、関係者の深い嘆きを誘った。
そして、ここ伊勢崎に所属した伊藤正司さんが昨年11月8日に59歳の若さで亡くなった。闘病の末の早すぎる他界だった。
『最強インファイター』の異名で多くのファンに親しまれ、愛された個性派戦士の遺志は、その子息がいつまでも後世へと受け伝えていく。
伊藤正真。正司さんが生前から「ショーマって本当にいいヤツだろう。周りのみんながそう言ってくれるんだ。うちのかーちゃんが育てたナイスガイなんだ。オヤジに似なくて本当に良かったわ(笑)」と目を細めて自慢しまくっていたジュニアが今、自身も認める勝負師としての甘さを投げ捨てて、正真正銘の一本立ちしようとしている。
最愛の父を失った直後の復帰開催(11月23日、伊勢崎V戦)を正真は圧巻の走りで優勝を収めた。そして、心の底から言葉を絞った。「これからはオヤジの想いは、自分とヤッシーさん(正司さんの弟子である松本康)でつないでいきます!ショージイズムで戦っていきます!」
正真には小さい子がいる。正司さんも溺愛した幼子を育てながら、日々の激闘に面している。
大敗を繰り返して、苦しんでいた時に正真はこう言った。「自分はね、オヤジが頑張ってくれたお陰で子どもの頃から不自由なく生活させてもらえました。大きな家に住ませてもらえた。ああ、ホントに全部オヤジのお陰なんですよね。思春期を迎えた頃だったかな。実はあまりオヤジのことが好きじゃなかった時期があったんですよね。あの頃、自分は柔道をやっていたんですが、レース場から帰ってきたオヤジが試合についていろいろ言うわけですよ。帰って来て急になんなんだよ、マジでうるせ~わとか思っていましたよ、あの当時はね」
そして、しんみりと続けた。「でもね、自分も同じレーサーになって気づきましたよ。オヤジって本当にすげえな。マジですごい選手なんだなってね。自分はあそこまで厳しい気持ちで戦えていないし、そこが自分の甘さでもあるという話になるんですが、一緒に同じ世界で仕事をするようになって、改めて尊敬するようになりました。オヤジ、格好いいわ!ってね。だから、思うんです。自分がオヤジにそうしてもらえたように、今度は僕が自分の子どもたちに同じような生活をさせてあげたいなって。そのためにも甘いことは言っていられませんよね。ちゃんとレースで結果を出して、嫁と子どもたちにいい生活をさせてあげないと!」
正真には、父譲りのDNAが体内にマウントされている。乗る才能には間違いなく恵まれている。それは多くのライバルが認めているところである。
あとは気持ちだ。正直、これまではちょっとお坊ちゃま気質が抜けない一面があったように思う。どこかストイックに徹し切れぬがゆえ、備える潤沢な素質をフル活用するに至らなかったシーンはきっとあった。それは本人が一番自覚するところと思う。
これからの伊藤家の大黒柱は正真が担うことになる。尊敬する父のため、愛する家族のため、そしていつもサポートに感謝する大切なファンのため。一枚も二枚も殻を破った正司ジュニアの姿を2026年は絶対に見ることができるに違いない。やったれ、スーパーショーマ。(淡路 哲雄)