【オートレース】一度は引退を決意した飯塚のエースが年末の頂上決戦に挑む~SS王座決定戦出場選手紹介〈1〉有吉辰也
◆第40回スーパースター王座決定戦・SG(12月27~31日、川口オートレース場)
一度は引退を決意した男が、もしも再びSGを制する瞬間が訪れたら…。平成時代を席巻したかつての自分自身をついに凌駕することになる。
6年連続、12度目の年末頂上決戦エントリーを今年も叶えた有吉辰也が、2025年はついにV候補の一角として、年の瀬の川口へとやって来る。
「何とか今年も出場することができましたね。ただねえ、今年はそこまでエンジンが良くないんですよねえ」といつもの穏やか過ぎる表情で飯塚の支柱は静かに語り始めた。
21世紀初頭は、まさにレーサー生活の絶頂タイムだった。2008年オールスターでSG初制覇を達成。2010年にはオートレースグランプリを制し、年間賞金王、年間MVP、そして全国ランク1位にも就任した。あらゆる栄光と勲章、タイトルをその小さな体で抱きかかえまくった。
しかし、2013年9月に激しい落車事故に遭遇して身体に多大なダメージを残した。
半年以上の時を経て、再びオーバルへと戻って来たが、そこに往年の桃色王者の姿はなかった。
下半身に深刻なダメージを残して、かつてのライディングフォームは崩れ去ってしまった。
マシンを御せない。当然、成績は伸びない。2016年ランクはA級108位まで大陥落した。同年の年間獲得賞金はやっと1000万円を越える程度まで減額した。
その時だった。ついに引退を決意した。しかし、周囲の引き留めに委ね、思いとどまり、そして、今の有吉がある。
2020年には奇跡の年末バトルへ復権し、以降は連続参戦を達成している。
「そうでしたね。20年にまたSSを走れた時は、もうただただ、その場の雰囲気に浸っただけでした(初日から7、8、5、6、2着)。でも、翌年は最後の8人に残れたんですよね。その辺りからですかね。また何とか戦っていけるんじゃないかと思えるようになったのは」
ビフォア落車の自身を今、アフター落車を経た有吉は49歳にして乗り越えようとする勢いを己の研さんで手につかんだ。
現行ランクはS級5位。若手、気鋭の台頭が目覚ましい令和オートの風に、有吉はガチンコに真っ正面から対峙して、結果を残し続けている。
11月の日本選手権は地元飯塚開催だった。同地区の選手支部長を歴任する立場で、大会PRに務め、コースでも初日から負けなしの5連勝。完全V&復帰後初SG制覇をかけて、ホームファンの大声援を浴しながら、スタートラインに就いた。
結果は、2着。わずかのところで大願成就を逸した。うなりまくる佐藤励に屈した。
「あの大会はいろいろと大変でしたけれど、あともう一歩でしたね。もう、サト~レイ、空気読んでよ~という話です(笑)。でも、あの場面で2着でゴールできたことですごい手応えをつかむことはできました。う~ん、また厳しい戦いにはなると思うんですが、今度は佐藤君の地元川口でやり返したいですね。またSGを勝つことができたら、もう完結です。引退してもいいです。SSを獲ったら、僕は走路にそっとヘルメットを置いて引退しますよ(やさしくほほ笑みながら)」
あれだけの負傷に苦しんで、第二の人生を考えた時ですら、仲間たちの慰留にすぐさま宣言撤回をした有吉さん。SGを勝って引退を口にしても、また必ず周囲から引き留められちゃいます。あの時に翻したんだから、今回はもっと簡単に辞めないでの声に耳を貸すことでしょう。
まだまだ、有吉辰也の全盛期はこれからです。頂点目指して一直線モードの佐藤励、NO1青山周平、2025年をリードする黒川京介をすべてやんわりねじ伏せて、10年後も飯塚のエースとして君臨してください。
(淡路 哲雄)
◆スーパースター王座決定戦 オートレースの年間チャンピオンを決める年末のビッグレース。12月31日に川口オートレース場で行われる。その年のSG優勝者と各場の競走成績1位選手、得点上位者計16人により、4日間(27~30日)の「トライアル戦」を戦い、ポイント上位8人が出場する。