

米スタートアップのSandbarは、人間の創造性や認知能力に取って代わるのではなく、これらを補うAI技術を生み出そうとしている。
提供:Nina Raemont/ZDNET
Sandbarは、用途をほぼ1つに絞ったAI搭載スマートリングを開発している。この「Stream Ring」は、ユーザーがささやきかけることで情報を記録できる、AI搭載のメモ兼思考整理のツールだ。付属のアプリは、話した内容を基にアイデアやリストを整理してくれる。そして重要な点として、リングはユーザー自身の声で返答してくる。
「特に移動中は、考えが絶え間なく湧き上がってくるものだ。私はスマホを取り出したり虚空に向かって話しかけたりすることなく、考えの記録やアイデアの検討をしたいと思った。重要な点として、その体験をバーチャルな相手との会話ではなく、内なる対話のように感じられるものにしたかった」と、Sandbarの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のMina Fahmi氏は、製品発表のプレスリリースで述べている。
Fahmi氏と共同創業者のKirak Hong氏は、CTRL-Labsという企業で初めて協働し、そこでニューラルインターフェースを開発した。同社は後にMetaに売却されている。
私はニューヨークのマンハッタンにあるSandbarのオフィスを訪れ、Stream Ringのデモを見せてもらい、自分でも確認させてもらった。
アルミニウム製のリングは一般的なアクセサリーのように見えるが、タッチパッドとして機能する平らなクラウンを備えている。ユーザーはこれを押して口元に近づけ、AIを起動する。リングを押さなければマイクは起動しない。タッチパッドはイヤホンで再生中の音楽の操作にも使用できる。
Stream Ringは、「活発な内面世界」を持ち、次々と湧き出る思考を整理、処理、または表現しようとしている人に向いているとFahmi氏は言う。また、Appleの「メモ」アプリのヘビーユーザーや、すでに対話形式で既存の大規模言語モデル(LLM)を使うことに慣れている人にとっても、相性の良い製品だ。
Fahmi氏は、地下鉄での通勤中に、その日の会議やそれぞれの論点について、リングを使って考えを巡らせながら音楽を操作している。勤務時間中は、散歩に出かけてリングに話しかけ、アイデアや出来事を徹底的に検討することもあるという。あるアルファテスター(初期テストユーザー)のマーケティング学の教授は、運転中に授業の準備をするためにリングを使い、それらの思考からメモやアジェンダを作成している。
別のユーザーは、公園で子供を見守りながらStream Ringに話しかけている。スマホやメモ帳とは異なり、リングと付属アプリは視線を子供からそらさずに使えるためだ。
「Stream」を呼び出すと、応答(ウェブ接続が必要)、行動の決定、メモの作成、そしてメモや記憶の修正、再グループ化、再整理といった複数のアクションを一度に実行する。さまざまなAIモデルが、この多様な機能を支えている。
個人的な体験、アイデア、計画を声に出して話すことで、すべてのやり取りが整理されるリングと付属アプリは、自己の拡張として機能するとFahmi氏は言う。これらのやり取りの中でユーザーに応答する声「Inner Voice(内なる声)」は、この概念の中核となるものだ。
Stream Ringのセットアップ時、ユーザーは独自のInner Voiceを作成するか、デフォルトの声を使用するかを選択できる。私は自分のInner Voiceがどのようなものか知りたかったので、用意された文章を読み上げて録音した。Streamはその音声をもとに声を生成する。そして再生ボタンを押すと、自分の声が自分に向かって話しかけてきたのだ。かなり不思議な感覚で、もともと単調な筆者の声が、さらに抑揚の少ない声になって返ってきた。
自分の声で返答されることに、人は本当に慣れるのだろうか? 私がそう尋ねると、Fahmi氏はこう答えた。最初の数回、自分のInner Voiceを聞くと人々は懐疑的になったり不快感を覚えたりするが、数日使うと、それなしにはリングを使えないという気持ちになる。
同氏は、Streamはユーザーを反映したものではなく、ユーザーを拡張するものだと強調する。「私たちは人々に、自分自身に加え、必要な何か追加の要素――追加の視点、追加の記憶、共感、あるいは創造性――を提供しようとしている」
このAIデバイスに対するStreamのアプローチは、現在市場に出回っている他のAIウェアラブルとは対照的だ。Fahmi氏は、人々がAIハードウェアやソフトウェアに対して抱いている不安、そしてそれが自分の自律性やコントロールを脅かす存在だと感じていることを認めている
「解決策は、他者ではなくあなた自身をモデル化することだと考えている。人にはそれぞれ意思があり、独立した人生があり、目標があり、視点がある。機械がそういう存在になるべきだとは思わない。社会がこうした機械にどう反応しているかを見るとき、いま起きている問題の多くは、われわれがこれらを人間としてモデル化しようとしすぎていることに起因しているように思う。人間のようにあなたの話をさえぎり、自分の欲望や夢を持ち、ときには反発してくるような存在として」とFahmi氏は私に語った。
提供:Nina Raemont/ZDNET
Stream Ringのもう1つの重要な特徴が、音量に関係なく言葉やリクエストを正確に拾えることだ。筆者の隣に座ったFahmi氏は、ほとんど聞き取れないほどのささやき声でリングに話しかけたが、その内容はアプリ側で正確にテキスト化されていた。
音楽デバイスを操作する要素は、私には奇妙に思えた。なぜStream Ringにそのコンポーネントを含めたのだろうか? Fahmi氏は、このリングは「会話型インターフェースの始まり」であり、デバイスの一時停止、割り込み、あるいは迅速かつ静かなアクションを実行するためのツールや触覚フィードバックをユーザーに提供するものだと述べている。
「オーディオや他のオーディオアプリと共存する必要がある」とFahmi氏は説明する。彼がスマートフォンを開いた状態でStream Ringを使うことはめったになく、通常はイヤホンをした状態で使用している。「スマホはポケットに入っていて、音楽を聴いている」と同氏は説明する。「もし会話型インターフェースが音楽との関係を壊すようなら、私は使わないだろう」
私がリングを試用した際、友人に振る舞う予定の食事についてメモを取らせたり、記事のアイデアを尋ねたり、リング自身について質問したりしてみた。触覚フィードバックは心地よく、私のタッチに反応した。Fahmi氏は、作成を依頼したリストの項目をアプリが自律的に消し込み、シームレスにアイデアを再整理する様子を見せてくれた。
最も惹きつけられたのは、その整理機能だ。私がテクノロジーに求めているのは、既存のアイデアや計画を取り込み、調整してくれることだ。Streamはこれを簡単にやってのけるようだ。すべてのアクションとメモ取りは素早く、ミスなく実行された。
Stream Ringは2026年に米国で発売予定で、現在、予約注文を受け付けている。価格は249ドル(約3万9000円)。これには「Stream Pro」3カ月分が含まれており、無制限のやり取りや新機能への早期アクセスが無料で提供される。試用期間終了後のサブスクリプション料金は月額10ドル(約1600円)だ。リングはほとんどの環境に対応するよう設計されており、シャワーを浴びたり手を洗ったりしても問題ない。睡眠時の着用は想定されておらず、バッテリーは終日持続する。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。
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